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インフルエンザ

予防医療の社会性(インフルエンザワクチン)

インフルエンザワクチン

巷にはさまざまな医療情報やヘルスケアネタがあふれています。

アカデミックに証明されていないことが多いのはもちろん、たとえ研究的に嘘ではなくても、実験室で最もよい結果を出す条件が、私たちの社会的な生活にマッチするかどうかは別物です。知識としては評価しても、いたずらに非医療者を扇情する意見を私は評価しません。

インフルエンザワクチンは毒であり、副作用だらけで、有害以外のなにものでもないという主張もその一つです。医療者(医師)である発言者が「私は絶対に受けません!」と断言していると、疑問に思います。
もちろん、インフルエンザワクチンの有効性は100%ではありません。有効性に関してはさまざまな数値がありますが、予防効果の研究結果にそもそも信憑性はないと考えられます。たとえば法定義務にまでなっている「ストレスチェック」の予防効果、いったいどれくらいか、厚生労働省は発表していますか?
インフルエンザのワクチンもウイルスも生ものである以上、毎年、人それぞれに状況は異なります。
たとえば解熱剤の効果を調べる研究なら、平熱(これにも難しい定義を決めます)から2度以上高く発熱した人を対象にして、解熱剤を飲んだ群と飲まなかった群を比較します。熱が下がる度合いや時間、副反応などを調べるわけです。平熱の人の熱まで2度下げては困りますから、その辺も当然、調査されます。
しかし、ワクチンを打つのはまだインフルエンザにかかっていない人ですね。その人が打たなければかかるのかどうか、それは誰にもわかりません。研究デザインの難しい理由、察せられますね。

インフルエンザワクチンナンセンス派の主張する、市井の感染症にはどんどんかかり、ときには思い切り発熱するほうが免疫力が上がり健康になるという理論には賛成です。もし私が社会と接点のない学生だったら、ワクチン接種代も惜しいし、学校も休めるし、わざわざ受けはしないでしょう。
しかし医者になってからは必ず受けています。職業上、感染者にも免疫不全者にも非常に接触しやすいからです。どんな疾患でも健康不全があれば免疫は低下します。それ以上に特殊な疾患や治療、先天性の原因で非常に免疫機能が低下していて、健常免疫の人間にはなんてことない感染が致命的になる人々も多く存在します。彼らはできることならインフルエンザでも何でもすべての感染症をブロックし、あらゆる日和見感染を避けたいのですが、ワクチンそのものがまさに一般の人には平気でも致命的になる行為のひとつであるため、受けることができません。
また、感染源の宝庫と知りながら、治療のため医療機関に赴かなければいけません。それなら、医療機関で働く医療職が、せめて自分のできる予防をしないことに理由があるのでしょうか。

仕事をしていれば誰にでも、絶対に休めない日があります。発熱して出勤するのはプレゼンティーズムの問題以上に、ひょっとしたら他人を重篤な健康不全に陥れるかもしれない原因を作る可能性があるのです。アブセンティーズムを避けるだけなら、インフルエンザ症状が出ても黙って、診断さえされなければよいかもしれません。職場にはワクチンを受けたいけれど受けられなかった免疫不全や妊婦の同僚がいるかもしれません。取引先のお嬢さんは大学受験を控えて外出を避け、あえて事務所兼自宅で勉強しているかもしれません。そして、あなた以外の従業員は全員自費できちんとインフルエンザワクチンを受けたかもしれません。
それでもあなたはワクチンの有効性の低さを理由に受ける人を馬鹿にするような姿勢が正しいと感じるでしょうか。

コラボヘルスの一環として多くの企業では健康保険組合がワクチン接種費用の一部または全部を補助しています。また各企業はやはり、接種費用の一部または全部の補助を福利厚生の一環として行っています。アブセンティーズムを生まないように、就業時間中、しかも昼休みの間にいっせい接種する企業もあります。

もし、社内パンデミックが起こったら、大切なお客様がどれだけ困るかを考えれば、経営者の決断は容易だと私は感じます。

医者の仲間では、実際、ワクチン接種をしない人数のほうが多いように感じます。周囲の非医療者でヘルスケアビジネスに関わる(ヘルスケアリテラシーが高い、又は高いと思われている)人々の中でも受けない人数が多いです。知識をもとに自分の行動を決定するのは尊いことで、それにいいも悪いもありません。しかし、一方聞いて沙汰するなのことばにあるように、単にワクチンの悪口だけを耳にして、受けた人までをそしるような態度は社会人としてありえません。

とにかく、ワクチンを受けようと受けまいと、かっこいい社会人でいなくちゃいけません。

 

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