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健康診断

ABC健診のススメ

ABC健診とは

ABC健診ABC健診は胃がんのスクリーニングです。

左の図のようにペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリIgG抗体検査という2種類の検査を行い、その結果によって4つの結果カテゴリーに分けます。

検査の説明についてはデンカ生研のページと厚労省委員会でも活躍しているABC健診の第一人者三木先生監修の胃がんリスク健診(左下が表紙です)がオススメです。

細かい内容についてはそれぞれの資料に譲るとして、ひとつ前のコラム、「それでもバリウム飲みますか」で検討した観点から、ABC健診を見てみようと思います。

まずは精度ですね。
胃エックス線検査(バリウム)は胃内に存在するバリウムをエックス線で透視して粘膜の性状や胃の形を見る検査、上部消化管内視鏡は小さなカメラで粘膜の性状を直接観察する検査です。胃の状態を視覚で直接観察し、画像を残すことができます。内視鏡の場合は見逃し(偽陰性)の理由は主にヒューマンエラーです。(だから目的があったほうがいいんですね)

表紙一方でABC健診は胃粘膜の萎縮度をみるペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリの感染をみるIgG抗体検査で検体は血液です。つまり血液の状態から胃の状態を推測します。直接見るほうがよさそうですよね、まさしくその通り、胃に異常があるかもしれないというリスクの度合いでグループ分けをするのが目的でそれだけの力しかありませんから、胃の病変を特定するとか何かを診断するとかいうアウトカムはありません。ただし、この検体血液は法定検診項目であるLDL-コレステロールなどを測るための生化学検査用スピッツの血液で済むので、時間や身体侵襲、不快な体験という点では法定検診のみと比べたときにずばりゼロです。

精度のお話のはずが快適さや時間の話題にずれてしまいましたが、快適さや時間についてはバリウム、内視鏡と比較不能なレベル(ゼロなので)で有利です。
精度としてはこれもまたゼロなのですが、二次検診時に目的を持たせるという点では総合的に有利だと考えています。そもそもバリウムに期待する効果が何なのかが明白でない時点で、ABC健診がおすすめです。

費用は3,000円程度(心陽クリニックは3000円)なので、バリウムの3分の1、胃カメラの7分の1くらいでしょうか。効果の終点が異なるので費用対効果を比較することはこれもできませんが、最初の出費はおさえられますね。

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日本人の胃がんの原因は99%以上、ピロリ菌の感染が背景にあります。胃潰瘍の原因も9割近くがピロリ菌感染、1割程度がNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤:ボルタレンやロキソニンなど痛み止め)、それ以外の原因は1%にも満たない状況です。
ピロリ菌やヘリコバクターピロリということばに一度は触れたことがあると思いますが、武田のページがわかりやすいのでご参照ください。

こう聞くと、「ABC健診でBかCになったら、99%がんになるってことですか?」っていう質問がだいたい女性から出るんですよね。生理休暇のコラムでも書きましたが、そういう不用意さが女性が数字に弱いとか賢くないとかというわけのわからない先入観につながるので、お互い、気を付けて発言していきましょう。ABC健診でBかCになったらヘリコバクターピロリ感染である可能性が高いです。ヘリコバクターピロリに感染している場合、胃がんに罹患するリスクが感染していない場合の10倍に高まると考えてください。ヘリコバクターピロリは除菌できます。つまり、胃がんの99%は罹患前の除菌によって予防可能な病気ともいえます。

2012年年齢階級別胃がん罹患率

毎年新しく胃がんになる人は全年齢の男性で0.15%、女性で0.06%程度(人口10万人対♂146.7人、♀62.4人:2012)、一生のうちどこかで胃がんになる率は♂10%、♀6%で、胃がんになる年齢の分布は左の図の通りです。
多くの企業で従業員の年齢は20~65歳で、バリウム検査をしているのは40歳以上が多いですね。退職後に罹患する人が圧倒的に多く倍以上なので、年に上記の全年齢男性の半分の0.07%の罹患リスクがあると仮定しましょう。実際は女性の従業員もいますし、左図の労働年齢罹患者のすべてが労働者というわけではなく、健康労働者効果を考えるとそれよりだいぶ少ない割合になります。1400人の会社なら毎年1人胃がんを診断されるかもしれません。
先のコラムでは胃がんを見つけるのに1,800,000円かかると指摘しましたが、罹患率から考えると診断精度が100%でも11,420,000円以上かかってしまいそうです。
全世界では50%程度がヘリコバクターピロリに完成していると考えられていますが、左のグラフの通り、日本のヘリコバクターピロリの感染率は非常に高いのです。
0.07%の胃がんをスクリーニングでみつけるのは大変ですが、50%のピロリ菌感染を見つけるのは診断精度が100%なら6,000円で済みます。
 
これも三木先生が冒頭の資料や第13回がん検診のあり方に関する検討会で引用している目黒区の検診では、リスク層別化検診は30,027人、エックス線検診群は9,611人で、胃がん発見率はそれぞれ、0.24対0.06、早期がん率はそれぞれ72.6%、16.7%でした。行政の負担した費用は、両者ともほぼ同じで、それぞれ1億2,886万円対1億2,599万円です。単純に計算すれば、リスク層別化群では1人の胃がんを従来の12分の1で発見しました。初期の検診単価は、エックス線検診の場合は1万3,100円に対し、リスク層別化検診では4,300円です。
 
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簡単にすると、バリウムと比べてABCの胃がんの発見率は4倍(10,000人で24人と6人の差)で特に早期胃がんを多く発見できた(10,000人のうち早期胃がんは18人と1人の差、つまり全体で4倍の差を作っているのはほとんど早期胃がんの発見率で、早期胃がん発見率だけで比べれば18倍の効果)。1回あたりの値段は4,300円と13,100円でバリウムが3倍高いけど、1つのがんを発見するのにかかる値段として考えると(これが国際的な医療行為の費用対効果の考え方)12倍も高くなります。極端に言えば、値段は12倍、効果は18分の1なのがバリウムだということです。

実際には検査結果が陽性であるのとピロリ菌感染があることはイコールではありません。血清抗体測定法の感度は88~100%、特異度は50~100%ですが、実際のABC健診結果のBとCを足した割合は25%程度です。

三木先生が引用されている企業健診の結果を用いると、ABCDそれぞれの割合は74%、16%、9%、1%です。ABC健診は3,000円くらいですから、胃バリウム検査のおよそ3分の1程度、除菌にかかる費用が15,000~30,000円です。これだと左のようなフローでグループごとへ介入をするための費用はちょうど同じくらいになります。

フロー

当然、ABC健診でAだったからといって、または、除菌を済ませたからといって、がんを含めた胃の病気にかからないわけではありません。ABC健診とその後のフローでがんを発見する効率についてこの後で説明しますが、内視鏡検査ですでに発症しているものが見つかる場合に、がんが発見できるのです。ともかく胃がんを取りこぼしなく見つけたい、という目的であれば、あくまで全員が内視鏡を受けるのが望ましいのです。ただしその場合、全員が法定検診のみの場合は無料なはずの胃がん検出コストとして、全員がバリウム検査の場合の3倍近く費用がかかる場合があります。あくまでもほとんどの企業のミッションは胃がんを見つけることではないはずです。
1年目に全従業員にABC健診を受けさせて、とりあえずBCDグループは二次精密検査に進みます。その除菌を含む精査治療後の取り扱いや、毎年Aグループの従業員についての取り扱いは結果に合わせて衛生委員会などで定めていきます。治療後はしっかりとフォローしてくれる医療機関を選ぶのが望ましいですし、主治医が経過観察の胃カメラをするべきだと思ったら保険診療内でしてくれるはずです。たとえば40歳以上の従業員については5年間Aグループでも内視鏡をするとか、Aグループの社員には下部消化管内視鏡検査など別の部位のスクリーニングの補助をするとか、健康ボーナスを出すような方法とかでもよいでしょう。

再発

胃がんになるのはほとんどの場合40歳以降ですが、ピロリ菌に感染するのは若いころです。高校生くらいで見つけると胃がんを発症してしまっているケースがほとんどないので有効なのですが、難しいお年頃なので、一斉検診をするのには適していません。

そこで一部の自治体では中学生に尿中の抗体を測る方法で検査しています。(感度85~96% 特異度79~90%)
未来へ向けた胃がん対策推進事業 新聞記事

胃がんに罹患しても就業と両立してほしい、という想いがあるのならばそれを、疾患を限定せず健康と就業の両立規定などで定めてほしいのです。得意の脱線ですが、厚労省の治療と就業の両立支援とか、世界的な表現であるワークライフバランス、そして弊社が用いている健康と就業の両立ってなんだか変ですよね。治療も就業も生活や健康の一部であって、正確には仕事と仕事以外の生活のバランスなはずですよね。まあ、そういうことで、企業が健康を損なったり、損なう可能性のある従業員を安心させたりするためにできるのは高額な健診よりも制度の充実だと考えます。
また積極的にがんはじめ治療で仕事を離れた人々のリクルートにも力を入れてください。

病気があっても働きたい、病気があるなら早く治療したい、そういう社員は素晴らしいです。だけど、結局、病気がなくて健康な社員が一番、会社に貢献してくれているんです。日本では病名さえつけば過保護な医療制度が口を開けて待っていますから、病気にならないための予防と健康維持を企業の務めだと知ってください。オーダーメイドの検診項目を含めたヘルスプロモーションプログラムをご提案いたします。いつでもご相談ください。

 

 

 

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