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アタシの人生(ってゆーか給料)、誰が決めるの? 【人事評価】

人事評価浦島太郎

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臨床医の働く大病院からビジネスの世界にやってきた私には、毎日、不思議なことばかりです。

たとえば、この世には「ソーシャルビジネス」という言葉があります。ユヌス先生には、偶然にお話しする機会に恵まれて莫大な勇気をいただいたので、「ユヌスヤングソーシャルビジネスコンテスト」のメンターをすることにしましたが、最初にソーシャルビジネスという言葉を聞いたときには、心底驚きました。

「ソーシャルじゃないビジネスがこの世にあるんですか?」 

ビジネスって、ソーシャルなものだと思ってたんで・・・・・・その後もアンチソーシャルビジネスがなんなのか、よくわかりませんが、ビジネス界ってホント、不思議です。

そんな私が現行の人事評価についてまたまたビックリして、シンプルにこういう人事評価するべきだね、という話をしたら、会議中に最近入った秘書(ブログやってます)

「当たり前だけど、驚き、かつ 感動しました!」ribbon

とすごく反応してくれたので、ちょっと医者の世界から見た企業の人事評価の不思議さを書いてみます。

人事評価の目的(使い道)

201762518351.jpg人事評価(人事考課)というからにはなんらかのアセスメント、スクリーニングのはずですよね。

で、評価をしたら、評価の結果によって次の行動が決定していくというのが、常識のはずです。

おそらく、ほとんどの場合、現在与えられている役割がどれだけ果たせているか、現在与えられている役割においてどれだけ企業の経営に貢献できているかというところを評価し、それによって企業が儲かるんだから当然ですが、成果や努力に見合うべく報酬を上げ下げするというのが結果から導かれるダイレクトな行動、帰結だと私は考えます。

健康と労働は密接に関係していて、私はほとんどイコールだという説を唱えて健康経営をひろめてまわっているわけですが、こう考える人々の領域にはいろいろな学説とか説明モデルとかが存在しまして(心陽はアカデミックエビデンスに基づくMSOHPが特徴です)、なぞらえれば人事評価とは EFFORT REWARD IMBALANCE MODEL を扱っていると考えます。

2017625184645.pngただし、この人事評価を使って職場へのロイヤリティを高めるのは、私が普段やっている健康診断やストレスチェックを用いる方法同様、すごく単純でわかりやすくできるわけです。そして、それがうまくいくと一番悩んでいる人手不足の問題も生産性の問題も一気に解決してしまいます。

人事評価の妥当性について論じる前に、人事評価の結果の用い方を先に考えましょう。

人事評価を用いて決断するのは、給料だけです。

だって、現在の、評価寸前までの仕事ぶりを評価しているんだから、それに対して労務対償性に報酬を決めるためにやってるんでしょ?

適性を見ているのなら、評価のしかたも、評価の利用のしかたも変わるはずですね。

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もちろん、人事評価の結果をヒントに異動を考慮する場合があってもいいでしょう。どんどん人事評価が下がり、どんどん給料が下がっている現実が、社員本人の努力不足ではなく、会社側の不適切配置によるものだとしたら、それを考慮してあげるのは当然です。でも、これまで別の部署にいたらもっとできたはずだから給料は下げないでおくね、みたいなことは絶対しないように。

心陽で最も避けるようにしているのはこういった事例対応です。いつなんどきでもこれは徹底します。

与えられた仕事を期待以上にしっかりこなせば給料が上がる、こなさなければ下がる、それだけのことです。だからこそ仕事を与える側は与える仕事に真剣である必要があります。

スクリーニングのつくり方

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手術をすることになったら、手術のうまい外科医に当たりたい、と患者さんは誰でも思います。

しかし、手術をする理由である病気の診断が、当たっていたり外れていたりしたら、どうでしょうか?

血液検査にしろ、画像診断にしろ、誰が採血しても、誰が撮影しても、そこに表れる結果は同じだと信じているから、次の段階で外科医を選びたくなるんですよね。

でも、果たしてそうなんでしょうか?

ROC

まず、ご安心ください。

医療機関で用いられるスクリーニングには、「うっかり」を最小限にするため、賢い人々の英知がイヤってほど詰め込まれております。

【目的】まず、当たり前ですが、検査を作る前に、目的をしっかり見定めます。

何を測る検査なのか? ってことですよね。

当然ですが、検便で肺がんを予測するのは難しいです。

目的に応じて適切な検体も絞られてきそうですよね。

対象となる疾患の早期発見が重要なわけですけれど、対象となる疾患がなんなのかは決めないといけません。
 

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人事評価においては「現在の与えられている役割を本人・企業の期待値と比較し、どれくらい果たせているか」ですね。
つまり、人事評価をする前に「役割」とそれぞれの「期待値」をしっかり定義する必要がありそうです。
それすらできていない企業が多いのが現実ですから、まあ、そんなに落ち込まないで。
 
【実施の条件】たとえば一定の疾患が疑われたときとか、定期健康診断とか、予防可能とかそういうものですけれども、人事評価の場合は全社員ですね。払う額を決めるものなので払われる人全員です。
 
 【検査性能が高い】ここではじめて、検査性能が出てきます

検査性能を決めるもの①妥当性

「妥当性」という言葉、私はよく使い、理解されているように思えたけど全然されてなかった、という経験の多い日本語です。
一般的にも妥当性という言葉は少なからず使われているようなのですが、多くの人の妥当性って意外にロマンチックというか、曖昧なものであるようです。

2017625192126.jpg検査の性能を決める妥当性は「感度」と「特異度」です。

わかりやすさのために血液検査によるピロリ菌抗体の検査を例にします。

検査の結果、「ピロリ菌陽性(ピロリ菌がいる)」と「ピロリ菌がいない(陰性)」という2通りの結果がありえます。

ピロリ菌がいるっていう結果の人のうち、事実として本当にピロリ菌がいる人の割合が感度、いないという結果の人のうち、本当にいない人の割合が特異度です。

つまり、どんな検査でもその検査結果があっていない可能性がある、ってことでもあるんです。

もちろん理想の検査は感度も特異度も100%ですが、現実の世界でこれはなかなか難しいものです。

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たとえば、法定健診項目などすべて感度特異度が計算済です。
今度、医療機関に行って「〇〇の検査をしましょう」と提案されたら、かっこよく。「それって感度、どれくらいの検査っすか?」と聞いてみましょう。
 
賢明な方はおわかりの通り、健康診断などの項目では、本当は病気じゃないのに病気になっちゃうリスクより、本当は病気があるのに病気と見つけてもらえないリスクのほうが大きいので、感度を上げるべく特異度を犠牲にします。
このように感度と特異度は常にトレードオフの関係にあります。
 
たとえば、人事評価の項目に自己申告の部分を作る際、ウソをつくんじゃないか、と考えるのなら、評価の構造上、ウソがつけないしくみが必要です。でも、大切な社員に対して完全な性善説という態度で臨むなら、何よりも正確な尺度が自己評価ということになりますよね。
 
人事評価においてはなにかの「あり」「なし」を白黒で判断するものではないので、厳密には少し異なる尺度を使う必要があるのですが、ここでは変化あり(上昇)、変化なし、変化あり(低下)の3つに見極めるテストだと簡単に考えてください。
賢い人は想像つくように、上に外しやすい評価と下に外しやすい評価というのも分類できそうですよね。
つまり、金をいくら払うかのチェックなので、払う人が適切な妥当性をポイントすればいいということです。
 
どうですか、御社の人事評価、妥当性がありますか?

検査性能を決めるもの②信頼性

信頼性がない人事評価制度って、ムード的に妥当性がないより終わっている感じがしますけど、どうでしょうか。
 
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妥当性のありなしは感度特異度で見ていきましたが、信頼性のありなしは再現性と検査者間一致度という尺度で見ていきます。
 
一般の方には「属人性」って言葉がわかりやすいんじゃないのかなって考えています。仕事が属人化していくと再現性がなくなり、生産性の評価がしにくくなりますよね。
 
それと同様に検査をする時と場合や検査を受ける人、そして、なにより検査をする人、それらの組合せによって、全然違う結果が出ちゃう検査って、全然意味ないじゃんという論点です。
 
確かに、そんな検査、信用できませんよね。
 
よくあるネットの性格診断とか、もう一度やってみるとあっという間に狼から羊に変わったりする経験、皆さんも味わったことがあることでしょう。
また、生年月日を入れるだけで性格診断される場合もありますね、「正義感は強いが柔軟性がない」なーんて言われちゃって、当たってるとか当たってないとかフェイスブックに載せちゃったりして・・・
 
これが、生年月日入れただけで、「右腎機能不全で摘出が必要」なんて言われたらみんな怒りますよね。まあ、怒るほど本気にもならないでしょうか、少なくとも、即、手術の予約をする人はいないはずです。
 
労働者にとっての給与って、最初の動物占いと次の臓器を摘出する手術、どちらの例に近い深刻さかと問われたら、私は後者だと考えます。ものすごく人生や生活に直結するファクターですよね、「あなたは2ランクダウン!」って言われて笑ってる場合ですかって思うんですよ。まあ、この、「ダウン」が少ない、あるいはない、っていう事実がこの深刻度を薄めているのもまた事実なんですけどね。
 
本来、評価するならしっかりとマイナス査定をすることも重要です。しっかりとした評価をする目的は社内に公正な文化を醸成し、優れた人が高く、そうでない人はそうでないなりに、能力に応じて適切に評価される文化を浸透させることです。
性格がいい、はきはきしている、見た目が美しい・・・・・・世の中にはステキな長所がたくさんあります。
それに応じて好きになったり、苦手になったりすることも、それはあるでしょう。
明るく優しいあの子がいると職場が華やぐ、だから彼女にいてほしい、だけど彼女は仕事は何もできません。という場合には、なんとかして彼女の査定を上げるべくまわりが努力するか、まあ、自分が努力して稼いでおこづかいでもあげるんですな。
 
再現性というのは、同じ人が同じ状況でもう一度チェックしてみたら、全く同じ答えが出るということです。
たとえば気分なんて一瞬で変わりますよね。
「高橋一生はかっこいいと思う」という質問に、「激しくそう思う」って書いた数秒後に「そう思う」になる可能性もあります。
でも「髙橋一生は俳優である」という質問だったら、おそらく、「はい」と答えたあとで、急に「いいえ」になる可能性は低いですね。
 
検査者間一致度というのはどの人が検査をしても同じ結果が出るということです。
高橋一生を好きか嫌いか、あなたの中ではさほどブレないかもしれませんが、他人にあなたの気持ちはほとんどわかりませんよね。
一方で、同じように俳優かどうかという質問なら、検査者間一致度はあがりそうです。
 
よくある人事評価の項目に、「協調性がある」かどうかを所属長が5段階で評価するなんていうのがありますが、私はそれで人々の給料が決まっているという現実に、はっきりいって驚きを通り越して爆笑してしまいました。
 
そもそも「協調性の有無」が最終的に判断したい「業務遂行能力の高低」にどれくらいコミットしているのかという評価は事前に済ませているのかどうかですよね。
 
たとえば最初の話で、腎臓を摘出するとなったら手術のうまい外科医に頼みたいと思っているとして、ランク表を見せられ、一番に評価されている医師が、協調性の高さでナンバーワン泌尿器科医に選ばれていたら、どうですか?
 
所属長の評価って、確実に5人いたら5通りになりそうですよね。
もう、まちがいなく彼らは「俺との協調性」を評価しますからね。
これが好き嫌いじゃなくてなんなんだっちゅう話です。
 
理論的な一貫性がなく好き嫌いで評価する会社だと社員が感じれば、社員は好かれる努力をします。
仕事そっちのけでおべっか使うわけですね。
まともな信念があり、能力があり、ときには評価者に意見するような有能な社員は評価されるどころか嫌われるので、嫌われるイコールマイナス評価なので、こんな会社に居続けても未来はないね、とやめていきます。
残るのはおべっかがうまくて仕事ができない人ばかり。
 
人事評価の常識が現状のままであれば、人不足ではあるもののまともな人はどんどん次の職場を求めるので、チャンスはいくらでもあるといえます。
正しい評価をして、優秀な人を中途採用だとか学歴が低いとか正しい指摘をするとかいう理由で正当に評価しないなんてことはなく(同じ理由で嫌うのは自由です、そりゃ、人間だもの、好き嫌いはあっていいの)、彼らを冷遇して無能なおべっか社員の尻ぬぐいをさせたりしない企業だとアピールできれば、そりゃ優秀な人が集まります。
おべっか軍団はいろいろ抵抗するでしょうけどね。
 
群盲 象
群盲有象を撫ず(群盲有象を評す)という諺があり、同じ本郷チームの武田が好きなのでよく聞くフレーズですが、人事評価がそうなっている現状が非常に多いのです。
 
さて、一般的な医学検査では妥当性と信頼性の評価のあと、実効性の評価をします。すっごい確実に診断できるけど、全員絶命するなんていう検査があって言い訳はなくて、迅速簡便低侵襲、それに加えて安価であることが重要になってきますが、羨ましいことに人事評価ではこの辺はさほど難しくない条件です。
 
そして、実効性のうち非常に重要なものは、『次の一手につながる』ってことです。たとえば先ほどのピロリ菌なら感染していれば10倍胃がんになりやすい&除菌さえすれば99%胃がんにはならないということなので、次の一手は現状把握の内視鏡と除菌です。陽性だったらむしろ、迷う必要はありません。
人事評価については次の一手は給料の金額として確実に変化があるのでこれもクリアです。
そして全員に効果(評価)が出るので、費用対効果も高い。たとえば2億人に1人しかいない病気の検査を法定健診でやっても割が合わないですよね。
 
本日は医療のスクリーニングと人事評価の遙かなるギャップについてお話ししました。
医療は科学ではないと感じ続けた臨床時代でしたが、ビジネス界の科学のなさを目の当たりにすると、まあまあ医療のほうが微妙に自然科学寄りだなあ、と感じる今日この頃です。
 
しかし、臨床ベースの視点をビジネスに活かすと、あら不思議、意外に簡単に展開しますから、ご興味があればいつでもご相談くださいませ☆

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