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Good Practice

勤怠管理と隠れインフルエンザ

隠れインフル騒動と勤怠管理

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常々日本の福利厚生や勤怠管理はベビーシッティング以外の何物でもないと辛らつに批判していますが、このたびの隠れインフル騒動はそれを強調するイベントだったと思います。
そもそも会社を休むということは、福利厚生とは何の関係もないこと。
勤務予定者の不在に際し、マネジメントは予定されていた業務とその業務に費やされるはずだった資本を再アレンジしなければいけません。予定者の不在という臨時のマネジメントや代替の資本は平時よりも多くの支出を伴うものです。どんなに誰でもできる業務でも、誰でもできる業務ならなおさら、それを埋めることのほうが高くつくのです。
社会において一番いけないことは人のものを奪うこと、何を奪ってもいけないけれど、大事なものほど奪うべきでないことは間違いないですよね。たとえば優秀な上司の業務上のスキームを盗んだとしても、上司の財産が減るわけじゃないから、これは盗んでOK。教えて下さいとかなんとか訳のわからないことをダラダラほざいて、本に書いてあることを読んで来もしないで、「これなんですか?」と一から上司の時間を盗むくらいなら、黙って盗むほうがよっぽどスマート。
そう、社会において一番重要な資産、奪われると失われるのは時間です。
この簡単なことを社員全員と共有するのが最も大切なことです。
会社の中で常に誰に何が起こるかわからないから、1人くらい急に抜けても大丈夫な設定を普段から敷いている企業がほとんどでしょう。そこに、一件の休暇願が舞い込んだ際、その休暇が生じても「1人くらい急に抜けても大丈夫」な設定を作らなきゃいけない。その休暇の理由が「5年に一度の珍しい自然現象を観に行くため」みたいなものだったら、それどころか、「もっと抜けるかも」くらい考えなきゃいけない。それにもかかわらず多くのマネージャーが、「1人くらい急に抜けても大丈夫」だから大丈夫と考えてしまうのです。
 

A子の憂鬱

2018225174858.jpgドメドメの大手商社からスマホアプリ開発メインのITベンチャーに転職して6年、つまらないセクハラから解放され大切な仕事を任せてもらえるようになり、同業他社で活躍する恋人もできて毎日が充実しているA子さん35歳は、それぞれ自分で稼いだお金で彼氏と旅行に行く計画を立てた。事前に上長に相談し、10月後半から1月後半の期間に3週間連続で休みたいこと、会社にとって最もリスクの低い計画を立てたいこと、必要なら前後に勤務時間が延びてもかまわないことを正確に伝え、上司から快く11月中の休暇取得を許された。余裕を持って休暇前のタスクをこなし、万が一のトラブルに備えたマニュアルを作り、チームメンバーのお土産リクエストも集めて、彼氏と腕を組んで成田エクスプレスを待っていた。彼氏も同じように如才なく、誰にも迷惑をかけない計画で休暇を取得したのだ。

上司からの着信にイヤな予感がした。
「おはようございます。本日からお休みをいただいておりますが・・・」
「おい、A子、悪い、旅行、来月にしてくれ」
「はい?」
「Bさんが倒れたんだ。なんかキュウセイ何とかっていう病気で、ともかく出社できない」
 A子の仕事の一時的なカバーをできる人材はチームにB氏しかいないからこそ、B氏以外のカバーをセッティングしてほしいと休暇依頼時に具体的に意思表示をしていた。そうでなければ、B氏になんらかのトラブルが生じた際、対処できなくなることがわかっていたからだ。一方でB氏の仕事を一時的にカバーできる人材もA子しかいない。A子は上長に伝える以前にB氏に休暇について打診したほどだった。
「C部長、私、B氏にその場しのぎに頼る以外の方策をとって下さるようお願いしましたよね」
「そうかもしれないけど、Bさん、倒れたんだぞ。病気なんだぞ。かわいそうだと思わないのか? お前は鬼か? どうせ彼氏と旅行だろ。ぜったい来月休み取ってやるから、1ヶ月取っていいから、頼む、今回はキャンセルしてくれ」
「急に休んだのはBさんですよね?」
「お前、Bさんは病気だぞ。お前は遊びだろ」

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 C部長なんかより普段からずっとB氏との信頼関係は厚い。心配していたとおりA子の穴に対してノーケアだったC部長のために会社に戻る以外の方法はない。A子自身の業務を止めていたためにB氏の業務に対するケアができる。呆れる彼氏はA子に軽蔑のまなざしを向けて1人で空港に向かった。
クリスマスにはすでにA子に恋人はいなかった。
1ヶ月後に取るはずの休暇についても一切話題になっていない。
B氏は急性心筋梗塞で緊急入院、ステント挿入後、1ヶ月後には職場復帰、A子には感謝とお詫びをしてくれた。後できくとA子の休暇に対して無策のC部長にB氏が箴言、それに気を悪くしたC部長がB氏に不要な負荷をかけ、B氏はそれをA子に悟られないよう無理をしていたらしい。
お互いを思いやっただけなのになぜかA子とB氏の対等な関係までぎくしゃく、A子は転職を考えている。
 

健康とパフォーマンスに一番影響するのは会社の正義

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そんな話、絶対ない、とは思えないのが皆さんの現状ではありませんか?
休暇の理由を会社に告げること自体、そもそも不要なのです。理由が何であれ、従業員の欠員には最低でもリマネジメントが必要、多くの場合、別の資源が投入されます。絶対にできるだけ事前に休みを知れたほうが会社にとって有利なのです。
昨今の隠れインフルエンザ報道では熱もない、症状もない労働者が「インフルエンザと言ってくれ」を主訴に医療機関に押しかけ、本当に医療を必要としている人に医療が行き渡らなくなるという事態をきたしました。循環器専門の友人のクリニックは「一般内科」を閉科しました。完全予約制の弊院にもマスクをした健康そうな成人が来院しました。なぜ健康な労働者が医療を求める人々を犠牲にしてまでインフルエンザの診断を求めるのか、それはインフルエンザの診断が休暇の免罪符になるからです。
インフルエンザかも知れないと思うくらいですから、いくらか体の不調はあるのでしょう。この体調では仕事をまともにこなせないから休みたい、休むべきだと思っているのでしょう。そこで休めば防げたかも知れない、インフルエンザの診断を受けるためにうろうろしたことによる感染の拡大や、インフルエンザではなかったのにもかかわらずそこでインフルエンザをもらうリスクなど、受診には無意味なリスクしか伴いません。インフルエンザとわかったところで提供できる特別な医療はありません。社会人として適切な行動は、不調を察したらすぐに会社に連絡、すぐに休養を取ることです。会社側はその連絡に応じて迅速にリアレンジメントするだけ。
「本当にインフルエンザなのか? 病院行ったのか?」は愚問です。
もし、インフルエンザじゃないのなら、明日、出てきてくれるかも知れません。だったらそのほうがいいじゃないですか。会社の根拠レスなつまらないルールがいろんな人を苦しめています。
産業保健とは職場という環境と従業員の健康の関連を調査し、どちらもが増進するように科学的なエビデンスを積み上げる学問と実践です。
また、健康経営とは従業員の健康という視点で投資を行ない、各従業員の健康やパフォーマンス、企業全体の心理社会的環境や生産性、そして企業価値やCSRのレベルを向上するというリターンを最大化する経営の手法です。
なぜ休むのか、なんてきくのはやめましょう。
しっかりと余裕を持って休暇を申請する社員は会社の宝です。
ずる休みだって仮病だっていい。
「彼氏と旅行」と「インフルエンザ」、同じ休みなのにちがう対応をするから、社員の中でも正義がぶれて、仮病を使いたくなるのです。例に出てきたA子さんがその後、生理休暇を使いまくったとしても、誰も文句言えませんよね?
 

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