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睡眠・覚醒・生産性

睡眠時無呼吸症候群の検診の普及(ACCJ白書より)

ACCJ–EBC 医療政策白書2017年版

ACCJ

皆さまは ACCJ–EBC医療政策白書 を知っていますか。
 
在日米国商工会議所(ACCJ)は、米国企業40社の代表により1948年に設立された日本で最大の外国経済団体の一つで、欧州ビジネス協会(EBC)は、16カ国からなる在日の欧州商工会議所および経済団体の貿易政策を担当する機関です。
在日欧州企業の貿易、投資環境改善について、1972年設立以来、活動を続けていて、2年に一度、エビデンスに基づく世界のベストプラクティスを紹介することにより、今後日本政府が適切な政策を策定し、その政策を実行していくことを支援するために白書をリリースしてくれています。
 
特に費用対効果や経済便益の考察に優れ、この分野が得意でない本邦において、私のように産業保健、健康経営による企業の利益を追求する専門家にとっては、2年に一度といわず毎年出してほしいと心待ちにするたいへん心強く待ち通しい素晴らしき味方です。
 
このコラムでは「健康寿命の延長による日本経済活性化」と題された2017年版から、 05 睡眠時無呼吸症候群の検診の普及 (26~27ページ)の部分をご紹介します。

05 睡眠時無呼吸症候群の検診の普及

現状

睡眠時無呼吸症候群患者の健康維持管理にとって、早期発見は最重要課題である。2015年時点、日本には300万人を超える睡眠時無呼吸症候群患者(成人人口の有病率は2~4%)がいるにもかかわらず、わずか354,000人(有病者の約12%)しか治療を受けていない。
いねむり
これは自らの健康状態に気付かず、病状も認識していない「潜在患者」が、多数存在しているということである。睡眠時無呼吸症候群は睡眠を分断し、慢性的な眠気を引き起こすばかりか、高血圧、心臓麻痺、脳卒中、心臓不整脈のような深刻な循環器疾患を引き起こす要因となる。
いくつかの研究では、適正な治療を受けていない場合、睡眠時無呼吸症候群患者の累積生存率は、治療を受けている患者と比べると大幅に低くなるということが立証されている。 日本で提供される治療は先進国と同等であるにもかかわらず、潜在患者に睡眠ラボで検査を受けさせるための努力は、不十分である。
未診断・未治療の睡眠時無呼吸症候群は社会に大きな損失をもたらす。未治療睡眠時無呼吸症候群患者は、睡眠時無呼吸症候群に罹患していない人に比べ、自動車事故率が7倍も高いと推定されている。
日本では、2003年に起きた新幹線運転士の居眠り事故がよく知られている事例である。
 
チェルノブイリ
現在米国で持続陽圧呼吸療法(CPAP)を受けている睡眠時無呼吸症候群患者数は300~500万人おり、日本の20~30倍に相当する。
この数字は米国で睡眠検査が幅広く普及していることによる。
人口1万人につき、日本では睡眠ラボ1床であるのに対し、米国では5~10床であると推定されている。
また米国では睡眠時無呼吸症候群の睡眠検査に対し、医師に診療報酬として平均1,000~1,500ドルという大きなインセンティブがある。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症の深刻さを考えれば、その予防と治療は公衆衛生に必要な投資といえる。
(引用者注:米国におけるインセンティブは日本円で12万円~16万5千円の計算になるが、日本では診療報酬が簡易な携帯型で720点、診断料を入れても900点である。3割の自己負担なら2,700円、医療機関には健保と本人から9,000円が支払われるが、検査受託料としてその6~8割をメーカーに支払うと、実際の対面診療やそれに伴う人件費を含めた諸経費を、診療料を入れても3,000円ほどでまかなう計算になる)

現行政策

現在、厚生労働省は終夜睡眠ポリグラフィー、および簡易式の携帯終夜睡眠ポリグラフィー(脳波計測機能なし)による睡眠検査の診療報酬を認めているが、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査の診療報酬金額は1検査当り、わずか33,000円(一泊入院)で、これには部屋代や睡眠ラボ技術者の人件費は含まれていない。報酬レベルの低さは医師にとって診療の十分な動機付けになっておらず、もう一方で、患者にとっては自己負担額の多さが阻害要因となり、睡眠時無呼吸症候群検査を受ける機会の減少につながっている。
 
健康保検制度によCPAPの導入基準に関しては、欧米の多くの国では1時間当たりの無呼吸・低呼吸指数が5以上で導入が可能なのに対して、日本では20以上と基準が非常に高く、他国では治療を受けられる患者でも、日本では適切なCPAP治療が出来ない。
 
いびき
定期的に行われる健康診断は、様々な生活習慣病の早期発見の重要な機会となっている。
睡眠時無呼吸症候群を治療しない場合、多くの生活習慣病に結びつくことが懸念されている。
健康診断における睡眠時無呼吸症候群の検査については、国土交通省より2003年に出された事業用自動車の運転者に対する通達のみで、一般従業員に対する指針はない。睡眠時無呼吸症候群罹患率が20%程度といわれている成人男性に対しては、何の指針も示されていない。
 
さらに女性においては、閉経後に女性ホルモンの分泌が低下する事により、閉経前に比べ閉経後は睡眠時無呼吸症候群の発症率が2~4倍程度高くなるという報告がある。
また、女性の睡眠時無呼吸症候群は男性の睡眠時無呼吸症候群と異なり、日中の眠気やいびきを伴わない場合が多く、自身や第三者に指摘されない事も多い。
放置すると様々な生活習慣病の引金となり、患者の健康リスクが高くなるため睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査に対するさらなる取組みが必要である。

政策提言

  • 睡眠時無呼吸症候群検査の公的医療保険制度の診療報酬レベルを引き上げる。
  • 睡眠検査がより充実している他の先進国に肩を並べるために、CPAP治療の導入基準の見直しを行う。
  • 定期健康診断時の取組みとして、成人男性と閉経後の女性へ睡眠時無呼吸症候群検査を導入する。

外国と比べた睡眠の質への満足度とパフォーマンスと睡眠の関係

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: 以降 SAS)の88%以上の日本人が治療を受けていない、米国の30分の1しか治療を受けていない、検査によって医師が得られるインセンティブが5分の1以下・・・・・・これらの情報を知ってあなたは何を思うだろうか。
 
夜、呼吸が止まってる
サノフィの調査では米国だけでなくフランスと日本、3国の睡眠を比べていますが、満足度や日中のパフォーマンス、不眠や眠気を感じた際の解決の仕方、専門家へのアクセスなどで日本が大きく2国の下流にいるという格差が明らかになりました。
 
また、以前のブログでもお伝えし、ACCJ白書の24)でも触れられているとおり、日本は諸外国に比べ異常に多い量のベンゾ・非ベンゾの処方を行なっています。サノフィの調査をみると、米仏と日本では医師への相談、医師の診察の意味合いが異なっているように思えます。
 
MSDの調査では不眠症の疑いのある層は日中のパフォーマンスが3割以上ダウンするようですが、ファイザーの調査による不眠の自覚とAISによる不眠の測定による解離をみると、ホンモノの不眠とパフォーマンスの関係はさらに大きくなる可能性が高く、睡眠質問紙とPSGの結果の解離をそこに載せるとなると、耳を塞ぎたくなるような睡眠時無呼吸や不適切な処方によるパフォーマンスの低下率が見えてくるようで恐ろしくなります。
 
 
企業にとってはSASのスクリーニングや治療支援は具体的な健康経営の投資対象として非常に適切ですし、雇い入れ時健診に取り入れれば最初からパフォーマンスの推進が可能です。
お見合いや結婚前にもなかなかよい検査ですよ(*´艸`*)

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