ホーム>心陽コラム>LIFE STYLE>睡眠・覚醒・生産性>職場睡眠健診の意義をエビデンスで検証
睡眠・覚醒・生産性

職場睡眠健診の意義をエビデンスで検証

健康リスクと労働生産性損失

健康と生産性健康リスクの数が増えるほど、プレゼンティーイズムもアブセンティーイズムも増え、その影響はプレゼンティーイズムのほうが大きい。

こちらで上げられている11の健康リスクは
 ① 栄養バランス不良
 ② やせ・肥満
 ③ 高コレステロール
 ④ 運動不足
 ⑤ 高ストレス
 ⑥ 予防ケア未受診
 ⑦ 生活不満足
 ⑧ 高血圧
 ⑨ 喫煙
 ⑩ 糖尿病
 ⑪ 飲酒

であり、1つもリスクがない労働者に比べ、8個のリスクを持つ労働者は20倍ものプレゼンティーイズムを損失し、たとえ同様に勤務しているように見えても、その実、リスクのない労働者の4分の3程度のパフォーマンスしか出せていず、その上、週に2.5時間以上も休むという勤怠の乱れ(アブセンティーイズム)があるというBolesらの研究はこちらでも何度も紹介しています。

Myde B., et al., " The Relationship Between Health Risks and Work Productivity". JOEM. 2004.
 
また、日本の事業者にとってコスト(プレゼンティーイズム+入院医療費+外来医療費)が大きい10の健康問題としては、以下が報告されています。

日本の生産性

1位 精神・行動異常
2位 筋骨格系疾患
3位 眼の異常
4位 消化器疾患
5位 神経疾患
6位 循環器疾患
7位 呼吸器疾患
8位 泌尿器疾患
9位 悪性疾患
10位 皮膚疾患
 
Nagata T., et al., "Total Health-related costs due to absenteeism, presenteeism, and medical and pharmaceutical expenses in Japanese Employers“.  JOEM. 2018.
 
これらの知見に基づき、法定健診やストレスチェックの結果を用いて、コストを最小にし、従業員のパフォーマンスを最大化するヘルスプロモーションプログラムを実行していくことが健康経営の1つの方法ですが、ここには「睡眠」についての問題が抜けています。
 
睡眠こそが全従業員に関係する健康を左右する最大の因子であり、睡眠に注目する健康経営が今、望まれています。

採用時と法定健診時の睡眠チェックを

不眠の割合
弊社クライアントでは法定健診時の問診で「睡眠により充分な休養が取れていない」と答えた従業員が51.2%に上りました。ストレスチェックの睡眠に関する項目の答えによると、全国の平均より睡眠の質がよい傾向のある企業ですし、不眠の有無を訊いた質問ではないので、おそらく多くのデータが示すとおりの約4割かそれよりも少ない従業員に、いくらか不眠の症状があるものと思われます。
もちろんそれを明らかにするために睡眠健診を今後行いますが、自覚的な質問紙による睡眠のチェックで予想できることがいくつもあります。
いくら喫煙率の高い事業場でもなかなか51.2%の喫煙率はないでしょうし、残りの48.8%の従業員の睡眠もおそらく大いに改善の余地があることを考えると、事業場の健康に介入する際、睡眠を扱う意義がわかります。
(図は「不眠に関する意識と実態調査より」https://www.msd.co.jp/static/pdf/product_20141106.pdf)

不眠の自覚は離職リスク

睡眠時間と不眠の自覚
勤務中の従業員への睡眠健診が根付いていれば、採用時の健診に睡眠健診を追加するのも非常に自然です。採用される新入社員にとっては従業員の健康にしっかりと意識を持つ企業だという印象を与えますし、睡眠の問題がもしあっても採用時から解決策を講じることで、パフォーマンスを最大化できます。
不眠による認知力の低下が存在する状態で研修してもいつまで経っても成長できません。
6,042人の被雇用者への調査によると、睡眠時間と不眠症状がは右のような分布でした。面白いのは9時間以上眠っている人にも不眠症状を訴える人が19.4%もいることですね。
 
皆さんは睡眠時間と健康、あるいは睡眠時間とパフォーマンスのU字の関係をすでにご存じだと思います。下の図は睡眠時間と死亡危険率の関係を示していますが、死亡危険率の部分を寿命の逆数や不健康、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、離職率、労働災害率、事故率、医療費、精神疾患罹患、がん(一部)、免疫異常、生活習慣病、体重、胴回り、体脂肪などなどにしても、同様にこの7~8時間の最適な睡眠時間を最低値(つまり最高に健康)にするU字型の関係がみられます。前述のように自覚的不眠観もこのカーブに乗ることは知りませんでした。
 
睡眠時間と寿命
さらっと言ってしまいましたが、そうなんです、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、離職率、労働災害率、事故率という労働生産性コストについてもこの関係がしっかりと当てはまることがわかっています。
 
今回とりあげるこれらの研究の面白いところはさらに、上の図で示したように睡眠時間だけでなく、不眠の自覚についても解析していることです。
 
P Haaramo., et al., " The joint association of sleep duration and insomnia symptoms with disability retirement - a longitudinal, register-linked study". Scand J Work Environ Health. 2012.
 
T Lallukka., et al., "Joint associations of sleep duration and insomnia symptoms with subsequent sickness absence: The Helsinki Health Study". Scandinavian Journal of Public Health. 2013.
 
離職率と睡眠睡眠時間と退職との関係は同様にU字シェイプではあるのですが、自覚的不眠症状のない群では統計学的に有意な差ではないことがわかります。
一方、自覚的不眠症状のある群では理想的とされる6~8時間の睡眠であっても、あきらかにリスクが高いことがわかります。
つまり、睡眠時間以上の離職のリスクファクターは自覚的不眠観であることが示唆されます。
そして、この離職と同じ関係性がアブセンティーイズムでも示され、その関係の強さは1~3日の短い欠勤、4~14日の中期欠勤、15日以上の長期欠勤と、欠勤の長さが増えるにつれて強くなっていくことがわかりました。
 
睡眠時間や自覚的不眠観がもたらすアブセンティーイズムや離職との関係が明らかになっているのに、採用時に自覚的不眠観を尋ねない理由があるでしょうか?
採用時に尋ねた自覚的不眠観を維持するのは労働者にとっての自己保健義務であり、尋ねて記録しておくだけで、企業はしっかりと安全衛生配慮義務を果たしている証拠にもなります。

睡眠障害のない睡眠不足はパフォーマンスに有意には影響しない

睡眠障害と生産性
米国の労働者のうち、なんらかの睡眠障害を抱える割合は36.7%、これは日本の多くの研究結果とも似た数値です。
睡眠障害の内訳は睡眠時無呼吸症候群が67.3%、不眠症が29.7%、むずむず脚症候群が29.4%です。
足して100%にならないのは合併している人がいるからですね。
 
L. M. SWANSON., et al., "Sleep disorders and work performance: findings from the
2008 National Sleep Foundation Sleep in America poll". J Sleep Res. 2011.
 
この研究でも前段に紹介した結果同様、睡眠障害がある人群のみで有意なプレゼンティーイズムの増加(・・・就業中の居眠り、集中力低下、コミュニケーション力低下、ミスの増加、事故の増加、やる気の低下、会話の低下、倦怠感増加、生産性低下、業務達成能力低下)、アブセンティーイズムの増加が見られました。
この研究ではあくまで自記式質問紙による結果をICSD-2に照らすかたちで評価をしているので、より正確な睡眠障害の分類ができた場合には、この関係はさらに強まると感じられます。
 
この研究の最後はこう締めくくられています。
 
アブセンティーイズムを減らし、生産性を高め、労災事故を起こさないための取り組みは経営者にとってすこぶる有効であるばかりでなく、労働者にとっても生活の質や働き方を大きく改善するメリットがある。睡眠障害に対する教育や診断、治療などの資源が増えていくことで、経営者、労働者、そして私たちの社会全体に大いなる利益がある。

睡眠健診のメソドロジー

睡眠と生産性

睡眠と生産性の関係、すなわち睡眠の質や量が向上すれば、生産性があがることには枚挙にいとまがないエビデンスが蓄積されています。
特に近年の研究によれば、量以上に質が重要であり、また、自覚的睡眠感と現実の睡眠のギャップについての知見が揃ってきています。
睡眠医療の専門家は世界的に不足しており、特に日本ではあまりに少ないのが現状で、産業保健分野との連携も充実しているとは言えません。
弊社では最先端の知見を踏まえた上で、職域の睡眠プログラムのBPOを請け負っております。
採用時から適切な睡眠障害への治療を施せば、従業員の生産性が担保できる上、ロイヤリティーの獲得にもつながります。
睡眠障害には適切な対処法があるので、けっして魔女狩りにはなりません。自信をもって取り組んで下さい。
 
 
 
 
 
 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.shinyo.pro/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/262

ページ上部へ