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ポピュレーションアプローチ

会社の心血管系疾患を9割近く減らす方法

恐怖! 「コレステロールが高いから、たまごは控えてくださいね」

さすがにこれは2018年の医療大国日本で、ジョークだと思わない人はいないでしょ~~~
と多くの人が嘲笑するレベルの指導ですが、今日も昨日もまだ、こんなことを患者さんに伝えている、自称「医師」がいます。

バカ産業医

大きな会社の中で産業医の一人としてして勤務していたとき、別の産業医にこんなことを指導されたという従業員に数多くいました。

「無知な産業医が従業員を翻弄している」なんてカルテに書いて、よくこっぴどく叱られましたね~。「和を大切にして下さい」なんて言われてね~。「産業保健の目的は健康管理室の和を保つことですか?」なんて言い返して、ほんと嫌われたものです。

健康診断を読む

従業員は産業医が言う医学的っぽいことは真実だと思ってまじめに従って、大好きなたまごを我慢して、大好きな牛乳を低脂肪乳に変えて、それなのにLDLが下がらなくて悩んでいるわけです。
そもそも乳製品自体必須の食物ではないので、まずくて飲みにくいと思いながら低脂肪乳を飲まされる理由なんて全くなく、本当に牛乳が悪いと思うなら禁止すればいいだけでしょう。
牛乳が好きって言ってるんだから、本当に悪いけど好きなら量を制限すればいいだけで、同じ牛乳由来で好きじゃない低脂肪乳に変える意味は不明です。

勘違いしている人が多いようですが、医学部では代謝の生化学は学びますが、栄養や調理については一切学ばず、低脂肪乳と牛乳の違いを普通の医者は知りません。食べることに関して、言うこときかないほうがいいですよ。
テレビではしょっちゅう医者に何を食べるといいという表現を使わせていますが、日本は医者が何かよい食べ方をアドバイスすることに診療報酬は出ませんし、よって知識もありません。調理法までアドバイスしている様子をよく観ますが、テレビ番組が出演料をくれるから台本を読んでいるだけです。
たとえば「EBV肝炎には納豆とキュウリを食べるといい」というようなアホらしい研究はまず行なわれないので、エビデンスはありません。(この例示も大嘘なので、一切信じないように)

生活習慣管理にエビデンスはあるのか?

先日はクリニックに、165cm85kg、20歳時には55kgだったという60歳の男性が来院しました。
彼は数年前、睡眠時無呼吸症候群を診断されました。
バカ 医者そして、なぜかCPAPではなく下顎骨切り術を第一&唯一選択として提案され、あまりの恐ろしさに逃げ、自分なりに低炭水化物ダイエットで88kgから73kgまで減量したところ、高血圧でかかりつけの高齢女性医師に「低炭水化物ダイエットは脳に栄養が行かなくなるので今すぐやめなさい」と注意されて素直にリバウンドした家庭血圧155/95mmHg程度の男性が受診しました。
ツッコミどころが多すぎてどうしようもないのですが、結果、現在は無呼吸も血圧も落ち着いて、医療費も数年前より減っています。体重も少しずつ落ちてきました。

 
これ、大スキでクリニックの入り口にも教訓としてPDFを貼ってあるんですけど、まあ、死因の第3位は医療だという話で、こんな医者がたくさんいるのではそうなるでしょう、って思わざるを得ません。

生活習慣管理料という高い診療報酬があって、私はしっかりとってしっかり管理するべきだと思うので、制度批判をする気はありませんが、考えてみたら、生活習慣指導のエビデンスって果たしてあるのかな?と。
服薬して、減量して、禁煙したら確実にリスクは下がりますが、指導の結果、そういう行動変容に至った場合にのみ効果があるのであって、指導したという事実はリスクを修飾しません。
アホ外来診療報酬はすべてアウトカム評価ではないので生活習慣管理料に限った話ではないのですが、病院に行って、「一番軽い薬」をもらって、しっかり服薬しているのにリスクを下げるだけの効果は出ないでリスクはそのままという国民を、42兆円もかけてこんなに作っちゃっているのは、不思議ですよね。
何がビックリしたって、面白い画像を探していたら、こんな名前の外来が存在していたことです。すごいですよね、非常に斬新です。

MRFITとエッグマン

写真はイメージでエッグマン本人ではないのですが、88歳で189cm84kgなので、けっこうデカくてがっしりしたおじいちゃんだろうなあ、とは想像しています。

エッグマン

今回、医学部に入る前からなぜかファンだったエッグマンの症例報告を読み直してみました。

 
1973年割り付け開始、1982年まで観察された当時2億ドルを投じたMRFIT研究(multiple risk factor intervention trial)はグズグズな展開で、健康指導、特に栄養指導が心血管疾患や総死亡率になんの影響も与えないどころかやらないほうがいいことを示唆、栄養指導群の心血管死亡率が2.4倍、総死亡率が1.4倍という結果を出してしまったヘルシンキビジネス研究(1991)、今の日本の栄養指導や保健指導ってどんなエビデンスに基づいているのか本当に不思議になる諸研究たちと時代を同じくして発表されたこちらの症例報告はなんと1日に25個もたまごを食べるのに元気なおじいちゃん、通称エッグマンについての報告でした。

ドクター エッグマン

当時は物語として読んだので、おもしろいだけだったけど、もともと文系の女子高生にはかなり難解な生化学的なことが書いてあるのに、よく挫折しなかったな~と我ながら関心しました。
むろん、よく言われているように口から過剰に摂取すれば吸収も、体内での合成も抑えられて血中脂質濃度というホメオスターシスを人体が保つというごくごくリーズナブルなお話です。
今回検索して、エッグマンというゲームのキャラがいることをはじめて知りました。しかも患者じゃなくて、ドクターエッグマン。

全員無差別多剤戦略

説得や指導、管理によって他人の生活習慣や日常の行動を変容させるのはたいへん難しいことだけれど、非常に有用です。
このようなスキルは医師とう職業においては確実に必要で、やっと医学教育の必修科目になった行動医学を修めた専門家達が、今後は本物の行動医学臨床を実現し、国民の認知や行動、そしてなにより社会全体をテクニカルに変える未来が期待できます。
しかしそれを手をこまねいて待っているわけにはいかない皆さまにはこちらの研究をご紹介しましょう。
 
 

内容をズバリ、言ってしまうと血中脂質濃度を下げるスタチン、血圧を下げる降圧薬、血漿ホモシステイン濃度を下げる葉酸、そして血小板機能を抑制するアスピリンを55歳以上の全員が内服することで、集団の心血管系イベントの発症率が88%、脳卒中が80%も防げるという驚くべき試算です。

88%の心筋梗塞が予防できる

葉酸は妊活中や妊婦の服用を巷で煽っているようですが、これら周産期への効果以上にかたいエビデンスとしてわかっているのが、この研究で示されているホモシステインの蓄積を減少する効果です。同時に葉酸の効果としてぜひ知ってほしいのが、飲酒による乳がん発症の影響を大いに緩和してくれることです。
 
たとえば中性脂肪をさげる処方薬には皆さんのよく知っているDHA/EPAがあります。日本人非医療者の不思議なところは、薬は体に悪く、サプリメントは健康によいと思う傾向があるところです。
サプリメントではなく医療上の治療薬として認められるには非常に困難な道のりを経なければなりません。それだけ安全で効果のある素性の知れたものだけが認可されるのです。サプリメントの中には効果はもちろん、安全性も確立されていないものがあります。副作用がないから表記されていないのではなく、副作用に対して検証する段階を経ないでいいので、書いてないのです。
実際に予防として自費診療で処方薬を飲んでいる現役医師も多くいます。
従業員にサプリメントを配布している企業もあります。もちろん自社商品なら素晴らしいですけれど、わざわざ他社から購入して配るくらいなら、専門家の助言を入れたほうがいいです。
 
その際の効果は心血管系イベントで6%、脳卒中で14%でしたから、この多剤服用戦略の効果のすさまじさがわかります。
 
つまり公衆衛生においては、医療をポピュレーションアプローチに応用することが最大の結果をもたらすことは疑いがなさそうですね。私自身はエビデンスのない職場でのストレッチや栄養指導に比べれば、学術的な試算が背景にある多剤内服戦略を企業が選択してもいいと考えます。
日本の経営者の多くは法定健診をコンプライアンスとしてだけでなく大切な社員の健康を守るものと位置づけています。しかし実際は、法定健診は社員を健康にはしません。社員を本気で突然死から守るために55歳以上の社員にこの戦略を行なえば、おそらく健診有所見者と医療費にすぐに結果が出るでしょう。
またこのシンプルな投薬セットは弊社の主張するマシな医療そのもので、やはり9割のイベントにそのマシな医療が効果があることを示すものでもあります。
 
もちろん行動経済学をふんだんに用いた無侵襲の介入で全従業員に健康行動を取らせるのが理想のポピュレーションアプローチです。血のにじむような努力で全従業員が1日2万歩以上歩くようになったとして、従業員の健康や企業の生産性にどのような影響があるのかは検証されるべきです。
健康経営はときに経営者の「やってる感」を満足させるだけのマスターベーションになっていることがあります。たとえ本気の医療を使っても、それが結果に結びつくのなら、マストバイです。いや、本物の医療行為ほど検証されている健康介入はないのです。名ばかり健康経営で何も結果を出さないくらいなら、これまで多くの疾患を解決してきた医学の粋の恩恵に職域であやかるのは賢い戦略です。
健康経営に医者や産業医は不要です。しかし、こうした医学的なエビデンスへのアクセスや、それを応用する専門性が、プログラムによっては一定の割合で必要です。たとえばこのような多剤併用戦略なら、一番に恩恵を受ける健保組合にコラボヘルスをもちかけるのもいい手です。
そのようなサポート、真の健康経営のお手伝いをするのが心陽です。
 
今回はポピュレーションアプローチに特化してお話ししましたが、ご自分の健診結果の把握にはこちらのコラムを、血中脂質についてはこちらのアブラカラブラシリーズをごらんください。
 
 
 
 

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