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健康経営

健康ハイリスク従業員は誰だ(2)スクリーニングの妥当性①血圧測定

企業で行なうスクリーニングの価値をどう見積もるか

スクリーニングというのは検査のことで、検査というからにはなにかの疾患や疾患リスクを明らかにするモノと考えられます。

本日は(1)の例を元に感度と特異度についてお話ししようと思いましたが、導入のつもりの血圧測定で熱くなってしまったので、血圧測定の回としましょう。

血圧測定

たとえば血圧測定というスクリーニングでは高血圧症という疾患が検出できますし、血圧の高さに応じて発症頻度の増える、脳卒中や心血管疾患などの致死的なイベントに対するリスクを検出することができます。

ほかにも生きていること、拍動していること、脈拍、血圧が人それぞれ、そして自分の血圧も測る度に違うこと、腕の太さなどがわかります。

ちなみに血圧の単位、mmHg ですが、Hgは化学の元素記号にあった水銀です。そしてmmはミリメートルで、水銀柱として〇〇ミリメートルの高さの圧、という意味です。
昔は水銀を利用した血圧計を用いていたのでこのような単位になりましたが、水銀はあまり日常的じゃないと思うので、水柱や気圧に変換してリアルに血圧をイメージしたい方は、こちらをどうぞ。よく映画などで上がる血しぶきの高さのリアリティなども想像できますし、止血の際にどれくらい強く抑えるべきかの参考にもなるのではないでしょうか。

会社で血圧

上腕にマンシェットを撒いて自動血圧計で血圧を測定するのは企業が選択するスクリーニングとしてたいへん優れていると感じます。

まず自動血圧計を用いた血圧測定はコストが安いです。1,000人の企業で3,000円の血圧計を20台買っても1人当たり60円、100台買っても300円です。10人に1台あるとなると、ときどき血圧を測る想像がつきますよね、毎日でも測れます。

測定には使い捨てのチップなどメンテナンスコストもいりませんし、あるとしたら電池代程度です。測定に要する時間は準備を入れても5分足らず、測定そのものは1分もかかりません。検査にかかるアブセンティーイズムも非常に小さいです。

血圧 日内変動

経済的な視点から最も血圧測定が優れているのは「誰でも測れる」ということ。機器の価格以上に検査費用に直結するのはその検査を誰がやるかです。医師しかできない>ナースでもできる>技師でもできる>誰でもできると最も高額な人件費分の上乗せが減ります。また、家庭用が出ているので、処方箋などもいりません。

医学的な視点から血圧測定が最も優れているのは、低侵襲であるということ。侵襲とは外的(物理的)ストレスのことですが、たとえば採血は皮膚に針を刺して静脈壁までを傷つけて進み、血液を採取するのですから、出血・血腫や感染・膿瘍、神経損傷などのリスクを伴います。放射線関連の検査では被曝します。体の一部や状態を観察するものなので、スクリーニングにはある程度のリスクが伴い、一つも細胞を殺さない検査はなかなかありません。

法定健診と合わせて職場で日常的なリスクチェックを行ない、シミュレーターで血圧のリスク低減効果を可視化することで、運動や食事、禁煙という他の健康行動へのモチベーションにつながる可能性も高いです。

それでは血圧計で測った血圧がどれだけ正確なのか。

実はこの質問、よくされるんですよね、血圧に限らずあらゆる検査値について。

よい質問だとは思うんですが、よい質問だと認めるためには、血圧の正確さによってあなたの行動が変わるなら、という前提が必要です。

意味のないことをしない健康経営

血圧は拍動ごとに変化し、1日に10万回以上拍動しています。血圧は心臓が血液を押し出す力とそれを受け止める動脈の抵抗によって違いますから、測る場所によっても変化します。生理的な日内変動もありますし、当然ですが必要に応じて高くなったり低くなったり変化します。それが生きているということです。

1年に1回、健康診断で測った血圧を「私の血圧」として1年間大切に記憶しておくことは、「正確とは言えない」でしょう。正確か正確じゃないかを知るためにはともかく数を測って、自分の血圧を知るしかありません。

医学的にはスクリーニングが正確か(有効か)どうかは、次回以降お伝えする感度と特異度で見ることになり、自動血圧計の場合はどれだけ正確に高血圧症が検出できるかという前提になると思うのですが、そもそも高血圧症の定義が血圧なので、血圧測定はスクリーニングというよりは診断器具なんですね。

たとえばおなじように低侵襲で安価な腋窩体温計による発熱の検出感度および特異度はそれぞれ64%および96%だそうで、その意味では感度も特異度も100%、すごく優秀な検査といってもいいんですけど、変動するからこそ、何度も測る必要はあります。

同時に血圧が高いと何が悪いのか(リスクチェック)や血圧をどう下げるのか、なにより血圧の薬を飲んでいても血圧が下がっていなければ飲んでいないのとリスクは変わらないということなどを啓発して、社内全体で血圧に対する意識を高め、それぞれ2mmHgでも下がれば、イギリスの例を取ると1,000人の会社で350万円以上の医療費を簡単に節約できます。1人分は3,500円でも、血圧計にかかっているのは300円、医療費だけで10倍以上のリターンのある職域のヘルスプロモーションプログラムは概ね、アブセンティーイズムで同等から1.5倍、プレゼンティーイズムで3~20倍の効果があると言われていますので、計算上、ものすごく導入する価値のあるプログラムだとわかります。

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たとえば、LOXインデックスというたいへん素晴らしい検査がありまして、血管壁の様子を知ることができます。もちろん心陽クリニックでも、1回14,000円で、この検査を行なっております。採血検査などで医師、または医師の指示の元、医療従事者が医療機関で行ないます。少なくともオフィスのデスクでは不可能で、アブセンティーイズムが数分で済む血圧測定とは異なりますね。

企業や健保の中には、この高額で素晴らしい採血検査をハイリスクの従業員に限り無料で提供しています。健康ハイリスク従業員が大きなインセンティブを受ける設定ですね。自分で払えば14,000円なら拒否する従業員はいないでしょうから、ハイリスクでよかったと喜んで受けることでしょう。しかし、そのあと14,000円をどういうロジックで回収するのでしょうか。

会社経営は慈善事業ではありません。従業員の健康管理は生活保護ではありません。採用時の健康状態で労務の提供が可能と判断されたのだから、その健康状態を維持する自己保健義務は労働者に課せられています。だからこそ労働者の努力によって健康状態が向上し、より高次の労務が提供できるようになった、している、となれば、企業に対して再評価を堂々と求めていいのです。

自己保健義務を怠って健康ハイリスク群に移行した従業員がインセンティブを受けるしくみは Organizational Justice とはいえず、健康な社員のロイヤリティーを高めません。血圧は誰にとっても下げるべきもので、血圧測定とLOXインデックス、どちらも同じように致命的なイベントへのリスクを示唆することができます。

会社に最も貢献してくれているのは健康な従業員です。会社に貢献する社員を適切に評価し、その労務の提供次第でしっかりと報酬を配分しましょう。これは Organizational Justice の中でも distributive Justice という領域で、職場のストレスとも大いに関連する部分です。下手な健康管理が多くの健康な社員のメンタルストレスを増やしてしまうリスクについても意識していきましょう。

本気の健康経営

 

 

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