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モンスター産業医

襲名 モンスター産業医

ブラック産業医について、過去4回にわたり連載してきましたが、『元祖ブラック産業医』を名乗る権利がなさそうだな~、これじゃあ流行語大賞の表彰式に出られる可能性は低いな~ と悩んだ末に、ふさわしそうな冠を見つけました。

その名もモンスター産業医です!!hospital

モンスター産業医ブラック産業医問題を紐解いていて、心底不思議だったのは、経営者(企業)・産業医ペア VS 従業員(患者)・主治医ペアの二元論で話が成り立っていて、社会的に経営者×医者は強いから、従業員×主治医(医者だけど)にハンディキャップが必要というような論調だったことです。

労使の関係というのはそれはそれはタイトなもので、どう考えても企業と産業医の関係や労働者と主治医の関係よりも深いものに思えるのです。

契約前にお互い一緒になりたいという同意があって、しかもお互いに複数の選択肢から選んで、納得ずくで一緒になった仲であり、生活のほとんどの時間をともにし、社会的身分や生きがいや、飯の種である収入など、ものすごく人生の芯の部分を共有する同志であるはずです。

企業の理念や存在意義に共鳴・共感してこそ、会社を選んだのだろうから、お互いによく知らない医者をセコンドにつけて戦う相手ではないと思うんですよね。もったいない。

医者は人生の黒子

もしかしたら非医療者の皆さんの多くは、いや、それどころか、ひょっとしたら医師を含む医療者の中にも、医者が病気を治していると感じる、または信じている方がいるかもしれませんが、医師には病気を治すことはできません。

病気を治すのは常に患者さん自身で、私たちはあくまで専門的な知識や技術によって、よりよい治癒に向けてのコンサルタントやサポートをしているだけなんです。
それは、どんなに食で人々の人生を鮮やかに彩る腕のいいシェフでも、お客様のかわりに栄養を摂ったり、おなかいっぱいになったりすることができないのと同様です。

産業医 健康経営産業医であっても、主治医であっても、あくまで皆さんの人生の黒子にしかなれない、主人公を輝かせることしかできない存在なのですが、はっきり言ってそういう役割が好きだからこそ、医者という仕事を選んだのです。

産業医や労働者の主治医にとって、企業経営者と労働者の関係をより強固に、より信頼に満ちた、より美しく楽しいものにすることは医師としての厳然たる使命であり、そのために働いています。

なのでそれ以外の、その関係を脅かすものに対してはときにモンスター化します。

モンスター〇〇と言われている人々を別の視点で見ると、強い正義感の強さや激しい責任感で、なにかを守るが故に、その守りたいものを脅かす可能性のあるものに対して、反社会的なほどに抵抗してしまっている場合が多くあるように感じます。本当にいきすぎて反社会的な場合も実際に多くあるとは思うのですが、ちっともモンスターじゃないのにモンスター呼ばわりされてしまっていることもまた多くあるように思います。

モンスターペイシェント

たとえば先日、ある大病院でモンスターペイシェント扱いされていた女性は、自分の手術の前に入院中の病棟の受け持ち看護師に、「明日、私の麻酔をかけてくれる麻酔科医はどなたですか?」と尋ねたそうです。

モンスターペイシェントどういう言い方だったのか知らないけれど(私はあまり適切な言い方じゃなかったのではないかと危惧するのだけれど)、尋ねられたナースは「知りません」とか「わかりません」とか「そんなこと知らなくていいんです」とかそういう回答をしたようです。

当然、女性は「私は人生をかけて、仕事を整理してこの手術に臨んでいます。私たちは一つのプロジェクトのチームであるべきです。チームのメンバーの名前や顔が見えないのはおかしくありませんか」と発言しました。至極もっとも、私はこのカルテを読んで、しっかりと自分の疾患や診療に向き合う、なんて最高の患者さんだろうと感心しました。

麻酔科なんて診療プロセスの中では黒子中の黒子ですから、名前を覚えていただく機会も少なく、その役割を主役である患者さんが事前にこんなに認識して下さっているなんて、私なら大喜びで自己紹介をしに病棟に跳んでいきますよ! 

病棟ナースは、プロジェクトチームの一員として、担当患者の麻酔を担当する医師の名前を覚えておいてもいいし、わからなければ、「ごめんなさい、覚えていないので、調べて後ほどお伝えしますが、〇〇教授を中心にチームで麻酔に当たっている、たいへん信頼できる専門家集団です。当日の緊急手術などにより、麻酔科の担当医が変更になる可能性はゼロではありませんが、(主人公)さんについてはチーム全体で共有し、適切な周術期管理を麻酔の専門家が行いますのでご安心下さい」とかなんとか答えようもあると思います。

でもその病院では医師もナースも「プロジェクトとかきもくなーい?」とか、「ちょっとメンタル入ってるよね~」とか、そんな扱いで、カルテに「モンスター」と記載していました。もし彼女がモンスターなら、間違いなくモンスターは褒め言葉です。

私は怪物

実は私、相当なクレーマーで、どう考えても生検するだろう!ってのに、平気で所見だけ書いて内視鏡を抜いちゃう健診センターや、患者(従業員)のアドヒアランスは良好なのに、何年経っても全然治療効果を出せない主治医とかには、すぐ電話で抗議しちゃいます。

モンスター 健康経営むしろ企業側の担当従業員が、え゛~~、この産業医、またクレームすんの? めんどくせ~~~ ってうんざりするくらいですが、大切なクライアントの大切な従業員におかしなことされたらたまんないじゃないですか。

たとえば診断書にも、平気でおかしなこと書いてくる主治医がいるので、どんどん電話してどんどん質問しちゃいます。だいたい「うわ~~、この産業医気持ち悪いから関わりたくない」と思われるようで、ナゾの診断はすぐに覆ります。

ちょうど昨日も健診結果に喫煙習慣の有無に関する問診結果が記載されていなかったので即電話しました。問診結果の記載が不十分で健診機関に問い合わせることは非常に多いです。これまでの産業医は一切気にならなかったのか? ってむしろ不思議なんですけどね。

厚生労働省にもよく電話しますが、マジメに取り合ってもらったことはないですね。たいてい、その改革が必要なエビデンスを出してこい、って言われるんですけど、現状許されてないからエビデンス取れないですよね? 現場の声を聴かないで、偉い研究者を並べて会議しているから、どんどん現実から離れた使いづらい制度ばかり構築されるのかもしれません。

主治医も健診センターも医者が直接電話してくると、たいていタジタジっとなりますよ。
産業医の使い道なんてそういうはったり要員としてくらいしかないので、けんかの先鋒にはもってこいです。
相手が医療機関であればあるほど、医師という権威に弱いです。

ずいぶん前ですが、事業所全員右脚ブロックだったことがあって、どこに電極貼っているか実演させたことがあります。正しい位置に貼って計り直したら、全員正常心電図でした。右脚ブロックが職業関連性疾患であると発表できるかと思って心躍ったのですが、健診センター業務の関連性誤診でしたね。

産業医 社員が命医者は産業医でも主治医でも、誰かの人生をより充実したものにしたいという思いでキャリアを選んでいます。

診療科によって、メンタルヘルス不全による自殺をなくしたいとか、事故によって制限されるアクティビティーを最小限にしたいとか、ともかくかかりつけ患者さんには心筋梗塞を起こすまい、もし起こしても早期診断で救命するとか、具体的なジョブはそれぞれであっても、ひとくくりにしたら全員人間が好きで、人生が好きで、それをもっと輝かせたいと思っているバカばかりです。

もしかしたらブラック産業医の記事に出てくるような金に目がくらんで魂を売ってしまったような産業医や主治医がいるのかもしれないけれど、そうでない人のほうが圧倒的に多いので、まあ、今週の結論としては、こちらですね。

取り替えるなら従業員より産業医sun

 

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