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遠隔診療と医師の働き方改革(1)Tele-ICU

Tele-ICU

こちらもFacebookで記事にしたのだけれど、Tele-ICUは地球レベルで医療の質を高め、働き方改革を叶える素晴らしい取り組みだと信じている。
 

 

テレドクター現在発売中のForbes JAPAN 11月号の特集、76億人の「医療革命」はテレヘルスの基幹となるビデオ通信システム「VSee」の紹介記事からはじまる。続いて、「モバイルヘルス革命」の震源地、アフリカのスタートアップ11、チャットボットドクター、イチロー先生と津川先生の対談、武藤先生の「YaDoc」、メディカルノート、コニカミノルタのケアサポートソリューション、遠隔病理診断、慶應の宮田教授、ミナカラ、ホスピタリティ・ワン、小川先生のAMI、加藤先生、AIドクターFDA承認ともはや、情報通信×AIによる遠隔医療の進化と効果に疑いを挟む余地はない。

特にモニタリングの上でアラートなりアラームなりを出すという作業は、人間にとっては退屈で苦痛で単純なミスが生じがちだが、機械は飽きずにミスなくこなしてくれる。

Tele-ICUについてはちょうど記事中にある昭和大学病院での取り組みについて話を聞き、期待でワクワクしたばかりだったので、ニュースになったことを嬉しく思ったが、記事の内容はどうにもお粗末に思えた。
 

遠隔診療中核病院と市中病院をつなぐだけでは、夜間帯の人手不足の解決になるのかどうだかわからないし、Tele-ICUで在院日数が減ったことと日本の国民医療費に占める入院費の割合が多いことを掛け合わせて短絡的に医療費の削減に結びつけるのは、集中治療の専門家の特殊な専門性という点が要であるTele-ICUに対していささか失礼に感じたからだ。

確かに日本の国民医療費における入院費の割合は大きく、また特に高齢者における死亡直前の数日間の医療費が大きな割合を占めていて、その期間にICUに入室する患者が多いという現実はあるが、その問題をTele-ICUで解決するのは短絡的で、それに対しては別の対策が求められる。

Reducing ICU Length of Stay: the Effect of Tele-ICU 

Tele-ICUの成果

Tele-ICUによって、ICUの在室日数はもちろん、ICUでの死亡率、全般的な入院日数、院内死亡率のすべてが好転することがわかった。研究によっては入院日数が増えるという結果もあったが、これに関してはICUでの死亡率とICUの在室日数が減った、つまりICUでの治療が必要なレベルよりも病状が軽快して一般病棟に移る患者が増えたせいだと考察されている。
システムの新規導入にはそれなりの初期費用がかかるものの費用対効果がどれほどのものかについてはピンとくる研究を2014年以降も見つけられなかったが、これから出てくると思う。
いずれにしてもその成果が遠隔チームと現地スタッフのコミュニケーション力に左右されるというのは面白く、これは実のところ、現場から指示を出しても同じことだ。
 

リモートワークどんな業務でもそうなのだが、リモートワークで生じるコミュニケーションの難しさが、対面で問題にならないかというとそういうことはなく、むしろ対面においては言外のニュアンスが誤解を生じさせたり、独りよがりな以心伝心力に甘えて不十分な指示を出したりということが起こりうる。

たとえば「質問してこないから理解しているのだと思った」管理職と「不明快すぎて指示だとも思わなかった」部下や、業務上の指示以外のことばかり話しかけてくる管理職とそれを受け流すのが習慣になっている部下などのコミュニケーションは、一定の伝達規程の中でリモートで交わした方が円滑になることが大いにあり得る。
自動的に記録されることで、言った言わないの問題も起こりにくい。

グローバリゼーションが叶える働き方改革

集中治療室という名前から想像がつくとおり、集中治療専門医や集中治療専門看護師の仕事はやりがいがあると同時に非常に要求度の高いストレスフルな仕事でもある。これだけデマンドの高い仕事だからこそ、これだけのストレスという負荷をかけなければ、仕事をこなすだけのパフォーマンスが出せないという言い方もできる。
通常の勤務時間だとしても求められる単位時間当たりの集中力が高いにもかかわらず、多くの集中治療の専門家たちが、超人的な過重労働をこなしているのが現実だ。
 
VISICU産業保健の専門家として期待するのは世界各国の集中治療専門家たちが時差を活かしてチームを組むことだ。当然だが、夜間の労働や不規則な労働は健康ばかりでなくパフォーマンスにも影響する。
特にICUで要求される治療では、国や文化によって大きく差があることはないだろう。それだけクリティカルな状況だからだ。
それぞれの国、それぞれの機関の集中治療のスペシャリストが、同じデータを見て指示をすることで、それぞれのスキルや知識がさらに高まることが期待できよう。
時間ごとにさまざまな国のスペシャリストがチームを組むことで、それぞれのコミュニケーション力も育まれるだろう。
これこそ地球全体のリソースを分け合う素晴らしい世界だと感じる。
 
保険診療米国ではオーストラリアとの時差を活かした連携が功を奏している。
ここに日本が加わればさらによい連携になるが、国をまたいだチーム医療に日本が参加するときに障壁になってしまうのが診療報酬制度だ。
現在、たとえば睡眠医療領域などではDtoDの遠隔診療が行なわれているが、これは持ち出しのボランティアとして行なわれている。
日経の記事中にあるような国内の連携では、中核病院への設備投資などに助成を設ける計画のようだが、実際に遠隔で指示、指導するICU専門医に対する報酬はどうするのか。
困っている、専門性が不足しているのはむしろ市中病院のほうで、中核病院はただでさえ不足しているICUの専門家の労働力を割くことになる。しかし、患者は治療費を市中病院にしか支払えない。
スキルがあるなら、スキルのない病院をボランティアで手伝って当然という発想が根底にあるなら、現在、議論になっている医者の召喚義務よりもひどい話ではないか。

医師の働き方改革

医師の働き方改革を国レベルで論じるべきときが今ならば、医療を提供する側にも労務対償性の概念をなじませるような設定がそろそろ必要だと感じる。
優秀な医師の海外流出を嘆く声をよく耳にするが、それにしてもせめて現役の年齢をすぎてから、海外で身につけたスキルを国内に還元し、制度の構築や教育に力を貸してもらうようなポストを用意する努力があってもよい。報酬でも身分でも国内より海外で正当に評価されるからこそ、流出しているようにしか見えない。
せっかくグローバルで多様性に富む、最先端のメディカルチームが編成されようという好機に、本来医療の質を上げるため、医療者の収入を確保するための日本の診療報酬制度が足かせになり、チームの一員に加われないのはなんともさびしい。
 
 

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