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健康ニュース・最新研究

便は便利②偉い人の感覚のナゾ

以前、便は便利①と題して、大腸がん検診(便潜血検査)のすばらしさについてお伝えしました。

今回は、その便潜血検査の市販化が検討されるという好ましいニュースとそれに対するナゾの抵抗についてお伝えします。

そもそも偉い人たちが的外れな言い合いを繰り返している一方で、誰でも検索すれば簡単にネットで既に買えちゃうので、その偉い人を集めるコストのムダったらハンパない感じがします。

ネットで買える便潜血キット

説明も健診センターのお仕着せよりずっと丁寧で、これを購入して検査するのはかなりヘルスリテラシーの高い健康行動だな~と感心します。情報の質も高いです。

「定性ですか? 定量ですか??」とか、クールに窓口で訊いてほしい!!postoffice

「大腸がんキット」市販化 専門家、なぜ懸念

昨年4月に検査薬メーカーでつくる日本臨床検査薬協会が便潜血検査を市販するための指針案を厚生労働省に提出し、1年以上経った今年6月、同省審議会の医療機器・体外診断薬部会で大筋が了承され、8月まで意見募集が行われました。
担当の同省医療機器審査管理課は「自分で簡単にできる検査で、大腸がん検診を受けていない人にも機会が広がり、検診受診者の増加が期待できる」と説明するのに対して、がん対策を担当する同省がん・疾病対策課は「誰が受けて、どれくらい精密検査につながり、がんと診断されたかという精度管理がまったくできない。国が推奨する対策型検診と違う」と難色を示す。

「誰が受けて、どれくらい精密検査につながり、がんと診断されたかという精度管理がまったくできない。国が推奨する対策型検診と違う」

この台詞、一見、賢そうなご意見ですが、意味は完全に不明です。

がん検診を受けない理由

がん検診を受けない理由は「たまたま」が多いのは有名ですが、最近の調査で、特に若い世代は「時間がない」と答える人が第一位です。(図は2016年11月の集計)
私見ですが、この「時間がない」には、「時間がもったいない」とか、「受ける時間じゃなくて、申し込んだり、待ったり、なんか書いたりする時間がばかげてる」とか、「大切な時間を意味のわからない待ち時間ではなく、もっと有意義なことに使いたい」とか、そういう意味合いが多く含まれていると考えます。
さらには、「わからない」「知らない」「精度が不明」などをも含むと考えられ、そもそもこの、みんなが好きな「健診を受けない理由」を集めることの不思議さが不明という私と同じ感覚の人々も入るのではないかと考えています。行動科学が行動の理由さえあとづけであることを明らかにしている時代に、受けない理由を並べるのはややナンセンスな気もします。
少なくとも時間がないから排便しないという生物はいないわけで(とはいえ、忙しさが労働者の便秘の一因になっているという事実はあります)、本来、便潜血の採便に割く時間すら捻出できない労働者というのはなかなかいないものと考えます。
採便といえば、一定世代以上のユーザーから、以前は容器にそのまま出していたのに、ややこしいプロセス(紙に出してプローベで引っ掻いて小さな穴に入れて閉じる)があるのが面倒という声も聴くのですが、おそらく、学校時代の検便との混同と思われます。まあ、それくらいはがんばりましょう。
そもそも便潜血の検査はその簡便性と非侵襲性に大きな軍配の上がる検査なワケです。だからこそ、特にこういう受ける時間がないなんていう人々に、より気軽な方法を提案したい、できるだけ簡単に侵襲なく多くの人に自分の体の状態に向き合うきっかけとしてほしい、それによって大腸がんの早期治療を含めて公衆衛生に寄与したい、というのが市販化の目的でしょう。少なくとも「精度管理」は目的ではないはずです。この人は何を言っているのでしょうか? 一見賢そうですが、あまり賢くないという疑いしか湧きません。

対策型検針

また、対策型検診とは、集団全体の死亡率減少を目的として実施する公共的な予防対策であり、有効性が確立したがん検診を選択し、利益は不利益を上回ることが基本条件となります。
便潜血検査化学法を毎年受診した場合には33%、2年に1度受診した場合でも13〜21%大腸がん死亡率が減少することがわかっていて、便潜血検査免疫法については、1日法を毎年受診することで大腸がん死亡が60%減ることが報告されています。
便潜血検査化学法の感度は25〜80%、便潜血検査免疫法の感度は30.0〜92.9%で、すでに対策型健診、任意型健診のどちらとしても充分に推奨されている方法です。
感度についてはこちらのコラムをご覧下さい。
自治体(国保)や健保のがん検診では対策型検針として便潜血検査が行なわれていることは周知の通りです。
精度管理と関連づけて議論するのなら組織型健診であり、そもそも市販化の話題なんだから、任意型検診について論じればいいでしょう。
思わずもう一度つぶやきたいのですが、この人は、何を言っているのでしょうか??

審査を受けた機器による測定と違い、目視による判定は陽性が出る割合が高く、信頼性が低い。また利用者が直接検査をすれば、陰性が出るまで何回も検査して受診機会を失うなどの混乱が起きる

こちらは別の偉い人の台詞です。
おみくじ確かに冒頭のネットで買える検査はしっかりとした検査機関が判定する一方で、現在議論されている市販化では購入者が自分で目視で判定します。妊娠検査のイメージですね。
検査精度という点では検査機関で判定するより劣る可能性は否定できませんが、「陰性が出るまで何回も検査して受診機会を失う」って、ちょっとバカにしすぎじゃないですか? そんな人います???
神社でおみくじひいてるんじゃないんですよ???
実際に便潜血検査の陽性をきっかけに大腸内視鏡検査を受けて大腸がんを発見される方の、便潜血検査時の血液が大腸がんに由来していないこともよくあり、それじゃあ、それは偽陽性なのかというとそうともいえないというか、つまりはそれが真の真陽性なのか真の偽陽性なのかという議論はさておき、有害事象のない非侵襲的で簡便な検査をきっかけに高次の検査を受けて、大腸がんが発見できれば、便潜血検査としての使命は充分に果たしているわけです。
そりゃあ、「大腸がんの早期発見」という大目的のためには全員が大腸内視鏡を行なうのがよいでしょう。
しかし、大腸内視鏡にはお金も時間もだいぶんかかり、肉体的にも心理的にもかなりなダメージをくらいます。前処置として検査前日、場合によっては数日前から下剤を飲み、当日も検査前から前処置をし、ときには開腹手術に移行する必要のある有害事象が生じるリスクもあります。
だからスクリーニングとして便潜血が素晴らしいわけで、わけのわからない混乱(?)を妄想して人々が検査にアクセスする機会を奪おうとするなんて、およそ医療者とは思えません。完全にイミフです(これ、死後ですね、そういえば)。

WRWB

WRWB(Work Related Well-Being)と病気があるかないか(検査値が正常かどうか)は何の関係もなくて、企業の健康管理における健康というのはあくまでWRWBである、ということを毎日しつこく主張していますが、WRWB的な不健康の症状として一番わかりやすいのが「やらない理由をゴタゴタ並べるという思考停止」です。
ある意味、これらの台詞ほどわかりやすいWRWB不全もありませんね。
 

がん検診って受けたほうがいいの?

この質問もよく受けます。
当たり前ですがあらゆる検診は検診でしかなく、それぞれに身体的、心理的、社会的なコストがかかり、妥当性もまちまちです。
多くの購買行動や健康行動と同様に費用と効果を秤にかけて個人が判断すればよいと考えます。
妥当性のあるとされている検査はその感度や特異度を含めた精度や有害事象が明らかになっており、多くの検診機関では検査料金を公開しています。
胃がん、子宮頚がん、肝細胞がんなどのように感染症との関連が明らかなものや、喫煙に関連するがんなど、予防できるがんもあります。
喫煙や飲酒を含めた生活習慣や遺伝に関連するがんに関しては、個人のリスクの高さが予想できるものもあります。
既往歴や家族歴、症状や法定健診および人間ドックの結果などによっては検診ではなく保険診療として、精密な検査を受けることも可能です。
がん検診を受けない理由で常に上位をキープする「がんだとわかるのが嫌だから」という人々のがんを、いかに早期に発見するかに注目するのなら、企業がややパターナリスティックに検診機会を与えるのがよいと考えます。
福利厚生は常に全社員に向けて行なわれるもので、ここもよく誤解されるのですが、全社員に対してデフォルトにすることと強制することは全く意味が異なります。強制であればそれはナッジではありません。
健康経営に興味のある企業は、上記のようにつまらない台詞で従業員の検診機会を奪うのではなく、市販化されたら福利厚生費でどーんと全員分購入して配り、その上で楽しみながら、コミュニケーションや健康風土、モラル醸成と同時に、がんに対するヘルスリテラシーも高めていくというプログラムを実施してみましょう!
 
 
 
 
 

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