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ソーシャルブレインズ入門 〈社会脳〉って何だろう

2018年度ナンバーワン決定

今年も半ば以上は必要に迫られて、たくさんの本を読みました。単純に快楽を貪る、それこそ非社会的な読書の時間が捻出できないのは、いくらかフラストレーションでもありますが、そういう快楽系の本は、いつ読んでも溺れられるものが多いので、あとに取っておく愉しみもある、という負け惜しみで我慢しています。とはいえ、ときどき徹夜して小説一気読みとか、マンガ全18巻一気読みとかしちゃってますが・・・

藤井直敬先生がデジタルハリウッド大学の先生になると知って、どんな人なのかな~と軽い気持ちで手に取った本が、目玉が飛び出るほどおもしろかったのでご紹介します。eyeeyeeyeeyeeye

social brains

かつてこんなにおもしろくて、こんなにわかりやすい、医者の書いた本を読んだことがありません。私の中で言葉としてうまくまとまらなかったもののうち、いったいいくつが説明されたか数えきれません。流行りの健康系意識高い系ビジネス本みたいなものについて、よくコメントを求められるので、高いな~~~と思いつつ購入して、もったいないから一応30分くらいでペラペラペラ~~~っと読むんですが、まあ、だいたい中身がその程度なので、時間が奪われないことに感謝しつつも、やっぱり高いな~とは思うのです。

ソーシャルブレインズ入門

が、この740円は安い。ちょっとしたランチ並みです。

日本の医療というのは制度上、正常じゃない人向けのサービスです。

ここでいう正常・異常というのは、マジョリティー・マイノリティーというような意味で、いいとか悪いとかは全然含まれてませんから、たとえばメンサに所属するほどIQの高い人は、正常じゃないってことになります。

この正常と「健康」が混同されているのが日本の特徴で、正常の専門家である医師が、健康の専門家であると誤解されているどころか、一番頭がいいからいろんなことを教えてくれる人みたいな位置づけになっていて、そのうち、テレビに出ている医者の言うことをきいたら健康はおろかお金持ちになれる、みたいな宗教になってきて、私のように本質的なことしか言わないと、「医者らしくない」というレッテルで炎上することがあります。

そういう科学的には理不尽なことが、社会的には日常的に発生してしまうことの不思議も、この本を読めばたった740円で納得できてしまいます。藤井先生恐るべし。医者じゃなくて作家になったなら、どれだけ美しく、冒険溢れる、素晴らしい小説を書いてくれるだろうかとナゾに期待してしまいます。今からでも遅くないから、是非、書いてほしいものです。それくらいすごい筆力。こんなにシンプルに、医学的にも科学的にも疫学的にも正しいことを、「医者らしく」書ける人は彼だけではないでしょうか。すごく素敵です。

そもそも私は臓器の中では脳が一番好きで、クリニックの患者さんにもビジネスのクライアントにも脳を中心に説明することが多いので、これ以上ないテキストを見つけた喜びにも満ちています。なにかの文学賞をとってほしいくらいです。

文脈とは何か

文脈とは重力とか摩擦とかだと理解しています。

学校で習う物理の問題には、真空状態を仮定するととか、摩擦がないと仮定するととか、ってゆーかそんな空間、この世にないじゃん、みたいな前提が出てきます。
なぜかというと物体エムが坂道を転がる速度について考えるとき、風が吹いたり重力があったり摩擦があったり、それどころか欠陥住宅でそもそも床が水平じゃなかったり、球のつもりで作成した物体エムが正確にはとても球と仮定できる代物じゃなかったりするのがあたりまえの現実で、現実という複雑なものを持ち込むと、クラスの中で一人も正解が出せないし、多分先生も答えがわからなくて、全員消化不良になるからでしょう。

文脈でも現実の社会の多くを文脈が占めているので、非現実的な前提のもとでしか機能しない科学を持ち込むと、いろんな調整が必要になります。

医療と科学がよほど関係していると誤解している人は多いかと思いますが、医療は生きている人間が関与するものなので、およそ仮定条件の中でなりたつ科学的な理論だけでは運用できません。

先日、NHKでテレビ番組を制作している人(自称)に、

「医者はアンドロイドではないので、他の人と同じものしか知覚できません。診断は経験的なものであり、初診で提示する診断名が現実と異なっていたからといってそれは誤診ではなく、真の診断に近づくために一つの診断が除外されただけです」的なことを言ったら、

「あんたそれでも医者か? 2人に1人ががんになる時代に、誤診なんかして、俺たちに死ねってことか?」とキレられました。

こういう人たちがメディアにいろんなものを載せるのだな~~~、それに翻弄されて人々は、社会にとっても自分にとっても意味のない行動に駆り立てられてしまうのだな~~~と思いますが、少なくともメディアで発信するという社会的責任を担っている人々はこの本を読んだ方がいいです。

美と脳

脳が現在の仕事の仕方をするようになったのには、人間がこれまで生きてきたいろいろな過程の文脈が関係しているわけで、働き方を考える上でこんなに参考になる臓器はありません。

脳はともかくすごく素直で、シンプルで、けっこう怠惰で、忘れっぽく、愛に満ちた実にかわいい臓器です。

藤井先生が脳目線でみると社会の中にいろんな人の脳がプカプカ浮いているって表現しているんだけど、そんな表現の中にも、藤井先生の脳への愛が溢れているような気がします。

認知コストの理解は健康経営にすぐ役立つし、コーヒーメーカーの例は涙が出るほど秀逸。私のつまらない書評はいいから、ともかくみんな、今すぐこの本を読むべし!という超絶お勧め本です。

2018年の一番は、間違いなく会計の世界史だと思っていたのですが、それが裏切られるなんて、もう変態的に官能的な喜びでいっぱいです。

 

 

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