ホーム>心陽コラム>健康経営>人事・労務>職歴のSCAR
人事・労務

職歴のSCAR

scar

経済学者のDavid T. Ellwood先生は、1982年に、特にその後の就業人生でネガティブに作用するリスクのある失業(とか勤怠とか給与とか・・・)の履歴を「scar」と表現した。

SCAR(スカー)は、瘢痕・傷あとを意味する。

医者は体に残るさまざまなscarを通してライフイベントを知る。例えば肥満熟年男性の胸腔ドレーン抜去痕を見つけて、「若い頃はやせてたんですね?」なんて言うことができる。
オペスカー(術創痕)でいつのどんな手術か予測できるし、受傷転帰の嘘に気付くこともある。
検屍では生前の情報を伝える。

本人・会社の都合を問わず失業、精神疾患であれ身体疾患であれ疾病休職や職場内ハラスメントの加害/被害などを含め、労働者としての歩みを、医者同様に採用のプロは履歴書や自己紹介の行間から読み解いてしまう。
これは実際によく目にする光景だ。

201932111020.jpg

Ellwood先生は臨床医療を経験してないはずなのに、このscarという名付けの妙にやけに感心してしまった。
当時、まだ20代なのに、かっこいい「仕事」だなあ。(「社会疫学」200ページに登場)

若き日のよい仕事もまた、スカーとして残る。
以前、小説『水妖の森』で正中切開創について記したのを想い出した。若き日の手術の痕は必ずしもネガティブな未来を招くわけでもなく、病やケガと戦った勇気の印は、よりよい未来につながる勲章でもある。
Ellwood先生の仕事がこうして今もまだ残って私の心を揺さぶるように、スカーを残さない努力ではなく、そのスカーを不名誉な汚点とするか、勲章とするかの工夫が重要で、雇用政策や労働法令はもちろんのこと、スカーをポジティブな人的資本のストックと考えられるような環境作りが必要である。

ちなみにEllwood先生の父はPaul M. Ellwood Jr.医師で、米国の健康維持機構(Health maintenance organization, HMO)の父とも言われている。(Ellwood先生はHMOの兄ということになり、弟と私は同年生まれだ

Ellwood先生の祖父も医師なので、そのような影響がこの見事な命名の背景にあったものかもしれない。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.shinyo.pro/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/315

ページ上部へ