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睡眠・覚醒・生産性

認知症一次予防としての睡眠改善 それを企業がやる理由

第44回睡眠学会に参加しております

この機会に本当に科学的に最先端の睡眠リテラシーを共有しますね。先日テレビで見た社内睡眠セミナーでは、睡眠に関連する物質名が誤って伝えられていました。一般の方の睡眠衛生向上に科学的な正確性は不要だと考えますが、わざわざ専門用語を用いるのならば、せめて正確であってほしいものです。睡眠プログラムの選択には睡眠学会員の外部講師に依頼することをお勧めします。
もちろん弊社のプログラムがお勧めです。

学会発表

ちょうど一ヶ月前は第92回産業衛生学会で、同じ会場(名古屋国際会議場)で企業展示を行ない、『ポピュレーションアプローチによる、集団SAS検査と睡眠向上セミナーの意義と効果』という発表をしました。

以前、弊社で行なったポピュレーションアプローチの睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニングをもとに、過小評価されているSASの発現率や行動変容を促す方法論、そしてそのイニシアチブを会社が取ることの重要性とその方法論をお示ししました。

なんと、共有していないことに今気付いたので、後日、アップしましょう。私の学会ネタFacebookはこのブログの最後に引用します。

余談ですが、会場の睡眠学会参加者に、ある演者が、
「不眠症になったとき、睡眠薬と認知行動療法、どちらを選びますか?」
 と質問しました。このメンバーなら全員認知行動療法を選ぶと期待したのですが、ちょうど半々くらいでした。たいへん驚きました。

認知行動療法は欧米では不眠症治療の第一選択で、睡眠薬と比べて不眠症への治療効果が劣るどころか、睡眠の質や併存身体疾患の改善などではむしろ有利であることが証明されています。日本では悲しいことに保険診療が適用されないので、専門家から受けるためには数万円の自己負担額になるところが最大のネックかもしれないですね。諸外国の事情や有効性を熟知する睡眠の専門家でもそうなら、医者から睡眠薬を出されてしまう非医療者はどうしようもないですね。

睡眠薬は危険

だからこそ睡眠薬がこのように日本で異常に処方されてしまっているのでしょう。睡眠薬を使用する場合でも、認知行動療法を併用することで睡眠衛生向上効果は高まり、睡眠薬を離脱できる(やめられる)チャンスも増えることが科学的にわかっています。効果があるとわかっていて副作用のない治療法に保険が使えないのは本当に残念です。

今日は睡眠と認知症に関する話題です。ちなみに睡眠薬と認知の関係については可逆的(飲んでいると認知機能が明らかに低下するが、飲むのをやめれば飲む前の状態に戻る)ではあるものの、その復活には1ヶ月以上飲めば1年以上を要することがわかっています。飲み続ければ認知症になるというわけではありませんが、飲んでいる間は認知機能に影響が出ていることは確実です。

睡眠と認知機能の関係についての学術的研究は古い歴史があり、睡眠時無呼吸と認知症の関係は1980年くらいから発表がありますが、さまざまな測定技術の発展によって、近年、多くのことがわかってきています。

睡眠不足で脳がゴミ屋敷に?!

アミロイドβとアルツハイマー型認知症の関係については聴いたことがある方が多いと思います。脳の中にアミロイドβというタンパク質が貯まっている状況とアルツハイマー型認知症は関係があることがわかっています。とはいってもアミロイドβが貯まると認知症になる、つまりアミロイドβの蓄積が認知症の原因であるということではないので、注意が必要です。とはいえ、治療効果の判定などにはたいへんよく使えます。

グリンファティック

アミロイドが貯まってない状態がいいらしいことはまちがいないので、貯めないほうがいいんですが、どうしたら貯めないでいられるかということなんですね。脳はタンパクでできていますから、毎日タンパクを7gずつくらい入れ替えてるんですね。アミロイドβというのはそういう日々の脳の営みで生じる生活ゴミのようなもので、きちんと掃除してゴミを捨ててれば本来貯まるものではありません。

つまりアミロイドβが貯まっている状態は掃除不足を反映していて、アミロイドβだけが貯まっているんじゃなくて脳全体が散らかっている状態を示唆します。非医療者の方や医療者でもテレビタレント業などが主で科学的な思考に慣れていない方はアミロイドβが認知症の原因と考えてしまいやすいんですけど、そういうことはわかってないし、アミロイドβをやっつける薬でも認知症は治らないので、アミロイドβだけを片付けてもダメで、脳全体を清潔にしておかなきゃいけないよ~ということだけがなんとなくわかります。
つまりアミロイドβは「脳の散らかり度」を表す指標としてはすごくわかりやすいねってことですよね。
だから脳の片付け度を測るときにも、アミロイドβが何をしてるかはよくわからないんだけれど、とりあえずアミロイドβが貯まってない状態までは片付けるという目標にしてもいいわけです。ひょっとしたらアミロイドβ自体はむしろあったほうが認知症にいいって可能性もあって、だからこそアミロイドβの蓄積がないのに認知症な人もいますが、少なくともアミロイドβが貯まっている認知症の人は治療効果が上がった場合にはその蓄積が減っていることが事実として知られています。

脳の掃除はいつ行なわれているのかというと、眠っている間なんですね。オフィスの清掃も通常勤務時間外に行なわれることが多いし、そのわけはイメージできるかと思います。私たちの体のゴミ掃除は概ねリンパ系がやってくれているんですけれど、脳のリンパ系については最近ものすごく注目が高まっている分野です。

睡眠とアミロイドβ

Glymphatic(グリンファティック:脳のリンパというような意味の新語)という言葉を最近、耳にしたことがある方もいるでしょう。寝ている間、CSF(脳脊髄液:脳の細胞外液で血液ではない)の量がぐんと増えて、動脈周囲腔を流れながらお掃除をします。睡眠不足による認知機能の低下やアミロイドβの蓄積とアルツハイマー型認知症の関係はこのお掃除不足で説明できるのではないかと考えられています。

実際にたった一晩の徹夜でアミロイドβは右脳海馬、傍海馬、視床下部に定着します。記憶や摂食におおいに関連するところですね。これは私見ですが、認知機能だけでなく徹夜するとやけにムラムラして性欲が増えたり、どか食いしたりしてしまいます。お酒を飲んで睡眠の質が下がるときも似たようなことが起きます。これも掃除問題なのではないか?と疑ってしまいます。

お掃除機能は睡眠の長さ【睡眠時間】と内容【睡眠の質】に関係します。

質のよい睡眠を適切な長さで取ることは脳のお掃除機能を高め、認知機能の維持向上に貢献する一方で、ちゃんと寝ないことが脳をゴミ屋敷にして、認知機能を低下させるリスクであることがはっきりわかっています。

睡眠時無呼吸で脳が縮む

SASと脳

睡眠不足の原因であり、睡眠障害の原因としてはその70%近くを占める睡眠時無呼吸症候群ですが、睡眠という生理的に重要な機能だけでなく、ガス交換(酸素をとりこんで、二酸化炭素を排出する)という生命活動の根幹的機能が妨げられます。そのために酸素と二酸化炭素を運ぶための循環器に異常が生じ、循環器系疾患(高血圧、心房細動、動脈硬化、心不全、命に関わる心筋梗塞などの心血管イベント・・・・・・)の原因になるのはもちろん、糖尿病や高尿酸血症をはじめとするさまざまな代謝異常をはじめあらゆる健康障害を引き起こすリスクがあります。健康障害だけでなく、認知機能の低下や日中の眠気によるパフォーマンスの低下、それによる労災事故、交通事故など社会的な問題にもつながります。

睡眠時無呼吸症候群で認知機能が落ちることはわかっていますが、その機序の一つは上で述べた睡眠不足と睡眠の質の低下による脳のお掃除不足が考えられます。もちろん睡眠による心身の疲労回復が不充分であることもその他の睡眠不足、睡眠不全と同様です。その上に脳の酸素不足が加わることにより、認知機能の低下にもさらなる機序が加わることがわかっていて、それでは何が起きているかというと、なんと、脳が縮んでいる、萎縮しているのです。

小児SASと脳

無呼吸のない睡眠不全では脳は縮まないかというとそういうことはなくて、慢性の睡眠不足で海馬の容積はみるみる小さくなっていきます。ただし、睡眠時無呼吸症候群の場合には容積の減る機序に低酸素も関わっているようです。そもそも低酸素を経験する脳では脳実質の炎症が4倍以上です。そして容積の減少、脳実質の萎縮は白質で顕著なのですが、白質だけでなく灰白質や脳幹でも起こっています。睡眠時無呼吸が脳を小さくしてしまうなんて、本当に恐ろしいですね。

ただし、睡眠時無呼吸の治療がすばらしいのは、心血管系イベントも代謝性疾患も交通事故リスクも、そして脳の萎縮もCPAPの治療によって元に戻るということなんです。医療の中には誰にでも効果があって、治療によってその疾患によるあらゆる症状やリスクが解決するなんていう夢のような治療はなかなかありませんが、SAS(睡眠時無呼吸症候群)のCPAPはそのひとつなんです。

つまりSASの早期発見早期治療は認知症や認知機能低下の一次予防なんですね。

特に幼少期のCPAP導入によって、人生に大きな違いが出てくることが想像できます。

睡眠と脳の密接な関係・・・企業としての投資価値

本日は、睡眠薬による認知機能の低下、睡眠不足と睡眠の質の低下による脳のゴミ屋敷化、SASによる脳の萎縮という睡眠衛生と脳の認知機能の関わりについてお話ししました。

認知機能が不要な業務はありません。睡眠を企業マターと考えることに、もう迷いはありませんね!

White matter integrity in obstructive sleep apnea before and after treatment.

Effect of continuous positive airway pressure on regional cerebral blood flow in patients with severe obstructive sleep apnea syndrome.

 

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