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ストレスチェック

ストレスチェック、課題も強みも集団分析

ストレスチェックアンケート

本年も日本生産性本部がアンケートの結果を発表しました。

1. 調査期間:2019年7月4日から9月12日
2. 調査対象:上場企業2,361社(人事担当)
3. 調査方法:アンケート用紙郵送法、WEBアンケートシステム回答法併用
4. 有効回答数:226社、回収率:9.6%
 

心の病の最も多い年齢層

年代別
「前回に続き、10-20代が増加。初めて3割を超え、わずかに40代を上回る。50代を除き各世代の比率が横一線となり共通課題になった。
2010年までの30代に不調者が多い理由を、仕事の責任は重いが、管理職にはなれないためという‘責任と権限のアンバランス’があるためと考察してきたが、年功制の崩壊と連動して、すべての年齢にこのアンバランスが広がったと考えられる。」
 
以上のように日本生産性本部は考察しているが、2006年~2010年に多かった有病者が30代から40代になったためと考えるのが、妥当に思える。50代が増えているのも同じように推測できるが、伸びが少ないので、50代になると治る人が多いのか、そもそも割合なので、比較する統計学的な意味は不明と言えば不明ではある。
患者総数年代別労働者数
とはいえ、10~20代の心の病が年代別で見ると特に増えているようだ。若年の罹患増加傾向は、労働者対策として捉えるより、教育機関における介入が有効なのかもしれない。
母数が左図のように変遷しているし、年代別の労働者数も右図のように変遷しているので、その中の割合を論ずる意味がまったくわからないけれども、それ以上に、ストレスチェック制度の意義が、個人レベルの気付きと環境改善による組織風土の醸成を介した職域全体のメンタルヘルス向上だと考えると、年齢層にわけて健康度を評価する意義は不明ともいえる。

ストレスチェックの課題

このあと、レポートは「心の病の増減傾向」と「組織の状態」「取り組み」の項目をクロスさせるとして、増加傾向にある、横ばい、減少傾向にある3階層で、増加傾向にある企業に比べて、減少傾向にある企業において、長時間労働削減の取り組み、健康経営(健康増進)(注:原文ママ、意味は不明)、組織や職場の生産性、場所に縛られない働き方改革の効果が上がっていると誘導しているが、あまりスマートではないので割愛する。

集団分析結果の活かし方

課題
「集団分析結果の活かし方」を課題として挙げた企業が64.5%と最多であった。
「集団分析結果の周知の範囲と方法」も28.3%であった。
 
ストレスチェックの活用方法としては集団分析しかないと考えている。
第27回産業ストレス学会でもこのアンケートを行なった日本生産性本部の根本先生が「階層構造を無視して集団分析はない」と断言していたのは心強かった。
しかし、学会を通してのメッセージとして、「人を大切にする組織風土・文化を醸成する働きやすい職場づくりという目標」を教条的なコンプラファーストではなく、納得感と臨機応変さを持ってやっていこうとする中では、これまでの集団分析の方法では機能しないように思う。
 
弊社クライアント企業を例に取るとグループ約100人の従業員で2016年の法定ストレスチェック制度開始から受検をはじめ、本年度も4回連続一週間の期間内受検率100%を達成した。
自動的に行なわれるガイドライン推奨のプロット、各項目の相関分析、各項目の偏差値と経年変化の可視化に加えて、毎年、実際の課題に応じた独自の分析を行なっている。
集団分析結果の発表と解説、今後の対策の提案は産業医であり実施者であり分析者である私が衛生委員会で行ない、PDFでレポートを提出する。このレポートを2017年度から、全社員がアクセスできるようにしている。個人情報は完全に消してあるが、家に持ち帰り家族と共有した従業員もいる。
会社でこんな仕事をして、こんな評価を受けているというコミュニケーションの話題にしたという。これはすばらしい集団分析結果の利用法だと思った。

魔女狩り方式からの卒業

ストレスチェックの意義は前述の通り、従業員の健康と組織の生産性が両輪で相乗的に向上する組織風土・文化・モラル・心理社会的環境の醸成にあり、これは健康経営や働き方改革、産業保健のすべてが目指すもので、あらゆる経営の目的とも言える。
 
「医師面接対象者が希望しないこと」が37.2%で次点に入っていることや、「受検者の正直さ」を疑う声が18.8%というのは、後者は昨年に比べ減ってはいるものの、回答者のモラルの低さが伺える結果である。
ストレスチェックの課題を特定の従業員のせいにする発想から抜け出さない限り、こういう組織での結果活用は難しいだろう。

上司によるソーシャルサポートの組織内分布と各従業員のストレス緩和効果の関係~組織の正義と心理社会的安全性の観点から~

学会では、ストレスチェックの集団分析の方法論への提言として、上司のソーシャルサポートに関する発表を行なった。

仕事のストレス要因には、上司のソーシャルサポート(=マネジメント)が大いに関連する
  • 環境の設定
  • 仕事の量や質
  • 業務時間(タイムマネジメント)
  • 目的や役割が不明確な業務指示
  • 自己統制、裁量権あるいは参画意識の欠如
  • 合理性や納得感の欠落した不適切な異動や組織変更
  • コミュニケーションに欠ける職場における緊張した人間関係
  • 家族や余暇に割く時間との葛藤(WFC)
  • キャリア開発の道が閉ざされていること(現在の業務でしか使い道のないキャリア)
NIOSH

NIOSHのストレスモデルによると、労働者のストレス反応は仕事のストレス要因、個人要因、仕事外の要因によって高まり、上司、同僚、家族らからのソーシャルサポートによって軽減されることがわかっている。

つまり、仕事のストレス要因とソーシャルサポートという二つの機序で、労働者のストレスに上司が大きく寄与していることがわかる。

ソーシャルサポートは情緒的、手段的、評価的、情報的サポートなどに分けられる。
 
上司のサポートは業務上の手段、評価、情報のみならず情緒的なサポートや部下の家庭へのケアが有効で、家庭への配慮がワークライフバランスを促進する。
 
上司のソーシャルサポートがさかんな組織においては、実際に現在サポートを受けていない従業員のストレスレベルが低いのではないか。
それとも上司のソーシャルサポートの組織分布と従業員のストレスレベルは関係ないのか。(恩恵を受けるのは実際にサポートを受けている従業員だけなのか)
 
職場の上司によるソーシャルサポートがさかんな組織は、さまざまな先行知見同様、集団免疫的に、直接サポートされていない社員に対してもポジティブな影響を与えるという仮説を立てて検証を行なったところ、上司のサポートを受けやすい組織では、上司のサポートを実際にどれくらい受けているかにかかわらず、従業員のストレス値が30%程度、減少することがわかった。
 
【考察】
  1. 仮説通り、上司から直接サポートを受ける部下以上に、上司からのサポートを受けやすい環境に所属していることがストレス反応を軽減することが示唆された。
  2. 同じ組織でサポートを受ける別の社員を見て、有事には手をさしのべてもらえるという安心感に繋がり、サポートの受けやすい環境として全体に認知されることで、チームの職業性ストレス耐性を高めるという機序が考えられる。
  3. これはソーシャルサポートの認知的側面の効果といえる。
  4. 教条的、画一的、一方的な押しつけ支援ではなく、各従業員と組織の状況と性質に応じた臨機応変な支援が納得感を伴う心理社会的リスク管理となる。(会長講演を受けて)
  5. 上司からのサポートの平均値が高い職場では、高ストレス者が発生しにくいが、交互作用の結果から、明らかなストレス要因によって発生するあらゆるストレスを抑えこむまでの効果はないことがわかった。
  6. 職場では組織全体に必要なときにはいつでも上司のソーシャルサポートが受けられるという心理社会的安全性を醸成するとともに、典型的なストレス要因に対する対策を行なう必要があり、その対策にはおおいに上司像が関連する。
  7. 上司のサポートの平均値が高い組織をサポートの受けやすい組織とするのには限界がある。上司のサポートが一定値以上の従業員の割合を説明変数としたり、ジニ係数やYitzhaki indexを用いたりして、より妥当性の高い上司のソーシャルサポートのコンテクスチュアルな影響の検証を行ないたい。
  8. 同時に、組織単位の生産性への影響をエコロジカルに検証し、経営者に対するメッセージ性を強めるとともに、先行知見を活かした具体的な上司像を目指すマネジメント教育の方向性を示したい。

弊社ではストレスチェックの結果から組織に応じた集団分析を行ない、課題はもちろん、それ以上に強みの抽出に重きを置き、具体的な対策を提案するとともに、必要に応じて対策の実施をサポートしております。

ストレスチェックの結果を生かすも殺すも集団分析次第です。どうぞ、ご用命くださいませ。

注)集団分析には回答データが必要です。

 
 

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